ファンの声という言葉って難しいけど、株主という視点を持ってくるとという話です。
先日書いたゼルビアの記事の補足的な記事となります。
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サッカーに限らず、スポーツにおけるファンの支えというのは非常に重要です。
ファンがいなければ、スポーツの規模が大きくなることはないと思います。
しかし、ファンの願いとクラブの願いは一致しないこともあります。
本日はそんな、スポーツとファンの関係について株主という視点からの考えです。
結論:ファンの声という言葉は抽象的、サッカークラブは株主が企業ではないケースが多い
スポーツを支えるファン
ここでは、サッカークラブを例にどれだけファンがクラブの売上に貢献しているかを見てみます。
Jリーグの浦和レッズの2018年の収支報告を見てみます。
これによると、浦和レッズの2018年の営業収入(普通の会社で言うところの売上高)は約75.5億円で、最終的な利益は3,900万円となっています。
売上の75.5億円のうち、主要3収入として、入場料収入、広告料収入、グッズ収入があり、それぞれ19.2億、32.3億、9.5億となっています。
広告収入はスポンサーからの収入にカウントするとすれば、ファンが支える売上は28.7億となります。
この他にもファンが使っているお金がないとしても、全体の38%以上を占めている計算になります。
ファンの人に如何にスタジアムに来てもらうかが、収入を左右するというわけです。
ちなみに2018年の浦和レッズの観客動員数は、平均で35,500人とあるので、単純計算すると試合数17試合なので、1試合当たりの平均入場料は約3,200円となります。
(19.2億÷35,500×17=3,181円)
売上をさらに大きくするには、より高いチケットを買ってもらうか、より多くの人に来場してもらうかということになります。
このファンというのは、色々なファンがいて、全てのファンを満足させることはできません。
そして、多くのファンの意見とクラブ側の意見が対立することもあります。
例えば、サッカーではルイス・フィーゴという選手がバルセロナからライバルであるレアル・マドリードに移籍する際には、バルセロナのファンから猛反発を受けるという事件もありました。
クラブ側としては、選手を移籍させてお金を得たいという考えですが、ファンとしては移籍させるべきではないという考えで対立が起きるわけです。
クラブとしては、色々な点を考慮した上での選択なのですが、一部のファンからするとそれが受け入れられないということです。
これがどちらが正しいのかというのは、当然分かるわけもないですが、決定権があるのはクラブ側です。
しかし、ファンの中にはクラブ側の決定を支持している人もいるわけです。
こう考えると、どちらも主張もあって、そのクラブの全てのファンを満足させる選択なんてあり得ないのかなと思ってしまいます。
例えばスポーツニュースにおけるファンの声というのは、一部のファンのものであって、サポーター全ての総意ということではありません。
これは政治の世界でも同様で、報道における街の声は、それをそのまま鵜呑みにはできません。
政治の場合は選挙という制度によって、ある程度公平な仕組みになっているとも言えます。
しかし、スポーツのクラブにはそういった仕組みがないところが多いです。
例外はプロ野球で、中でも阪神タイガースが挙げられます。
タイガースのファンは熱いことで有名ですが、阪神タイガースは上場会社である阪急阪神ホールディングスの子会社なので、阪急阪神ホールディングスの株主総会で、「監督が悪い」などの声が届くのです。
プロ野球の場合はこのように上場会社の支配力というのがあるケースが多いわけですが、サッカーでは少ないです。
最近では、鹿島アントラーズがメルカリに買収されたケースもありましたが。
このように企業が支配していない、地域に根ざしたサッカークラブでは、ファンとクラブの距離がより難しいものになるのではと思います。
鹿島アントラーズのチーム編成が気に入らなければ、メルカリの株主になって意見することができます。
先日の話なら、サイバーエージェントの株主になれば、ゼルビア町田について意見することができるのと同様です。
これが、企業が母体ではないチーム、例えばセレッソ大阪などは日本ハムが株主ではあるものの、恐らく日本ハムの連結子会社ではないので、クラブに意見することが難しいでしょう。
株主が会社を動かす権利を持っていると考えると、また視点が変わってくるのではという話でした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。