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【鬼滅の刃】劇場版「鬼滅の刃」無限列車編が大ヒットしたら、東宝の業績はどうなる?

【鬼滅の刃】劇場版「鬼滅の刃」無限列車編が大ヒットしたら、東宝の業績はどうなる?

【鬼滅の刃】劇場版「鬼滅の刃」無限列車編が大ヒットしたら、東宝の業績はどうなる?

鬼滅の刃大ヒットで、会社の業績がどうなっていくのかを経理マンが解説します。

映画の鬼滅の刃(10月16日(金)から公開)が、この消費が落ち込んでいる環境の中で、非常に好調な数値を出しているようです。

初動3日で45億円の興行収入という速報もあります。

私も今更ながら鬼滅の刃の漫画を少しだけ読んで、面白い!と感じました。

そこで、そもそも映画が大ヒットすると、上場会社である東宝の業績にどれだけインパクトがあるのかを調べてみます。

www.nikkansports.com

興行収入が100億を突破するかもという報道もある中、これがどのような意味を持つのか、経理マンの視点で解説します。

映画見に言ったら最高で、マンガも読破しました。

www.finance-accounting-value.com

www.finance-accounting-value.com

結論:上方修正リリースが10月終わりにも出る可能性

東宝株式会社と業績は? 

まずは東宝という会社の事業を紹介します。

資本関係から見ると、直近の有報(有価証券報告書)の大株主のトップ3が特徴的です。

f:id:ttt0330:20201019090453p:plain

大株主

1位:阪急阪神ホールディングスが12.67%

2位:阪急阪神不動産が8.41%

3位:エイチ・ツー・オーリテイリングが7.59% 

エイチ・ツー・オーリテイリングも阪急阪神ホールディングスが20%の所有割合を持っています。

上位3社を足すと28.67%ということで、阪急阪神HDが東宝の筆頭株主で、意思決定に意見を言える存在なのは間違いないでしょう。

ちなみにホールディングスって何という方は過去の記事をご覧下さい。

www.finance-accounting-value.com

資本関係の図としては、下記となります。

資本関係

東宝の役員にも、阪急阪神HD代表取締役会長の角氏の名前があり、影響力があることが伺えます。

f:id:ttt0330:20201019092603p:plain

役員

ここから東宝の業績を見てみましょう。

まずは5年間の推移です。

PL推移

売上高を意味する、営業収入は5年前が約2,300億円、直近の本決算では2,600億円ほどです。

最終的な利益としては、5年前が258億円で直近が366億円となっています。

着実に売上と利益を伸ばしています。

 

しかしながら、例のウイルスの影響を受けてしまう業界なので、今期の成績は急降下しています。

既に2Qという1年の半分が終わった状態の成績がこちらです。

短信2Q

前年比で、売上が50%近く落ち込み、利益は約80%減という苦しい状況です。

そして通期(年間)の予想も公開しています。

通期予想

1年間での売上予想が1,650億円、当期純利益(最終利益)が90億円としています。

売上は前年比37%減少、利益は75%減という予想です。

苦しい状況ですが、赤字にはならないという見込みのようです。

 

収益の柱はやっぱり映画?

ここまで東宝の会社全体の数値を見ましたが、収益の柱はやはり映画なのかを確認していきます。

東宝には主に3つの柱があります。

  1. 映画事業:映画営業、映画興行、映像事業に分かれる
  2. 演劇事業:帝国劇場などを運営している
  3. 不動産事業:不動産の賃貸など

それぞれの売上と利益を見てみましょう。

セグメント

直近の本決算の情報となります。

売上と利益ともに映画が一番の柱と言えます。

それに続き、不動産事業が第2の柱です。

この2つと比べると演劇事業の数値は小さいと言えます。

円グラフで表現すると、こうなります。

売上

続いて営業利益です。

営業利益

利益ベースではやや不動産の比率が上がっています。

それでも東宝は映画が最大の柱であることは変わりません。

 

5年前のセグメント情報も見てみましょう。

セグメント前

どの事業も売上、利益ともに増加するという理想の展開となっています。

その中でも映画事業の利益の伸びが大きく、これが成長の源泉と言えるでしょう。

 

そして従業員についても見てみましょう。

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従業員

これを見て分かるように、映画と不動産に人が集中しています。
 

映画のヒットと業績の関係

ここまでで、東宝の業績は映画事業に支えられているということが分かりました。

では映画のヒットと業績は、どう関係するかを解説します。

そもそもニュースなどで報じられる「興行収入」とは何かから説明します。

興行収入とは、映画館の入場料金の収入を指します。

ja.wikipedia.org

「鬼滅の刃」が既に興行収入が10億円を突破したということは、チケットが1回1,000円という仮定にするなら、100万回はチケットが購入されたという計算になります。(ただし子供なら半額など割引もある)

 

もう一つ、出てくる数値として、配給収入があります。

これは、興行収入から映画館(興行側)の取り分を差し引いた配給会社の取り分のことを指します。

映画館に放映してもらう代わりに、その分のマージンを支払うイメージでしょう。

興行収入が売上で、配給収入が営業利益みたいな感覚と理解すれば良さそうです。

 

1997年の映画「もののけ姫」は、興行収入は193億円で配給収入が113億円だったようです。

ja.wikipedia.org

東宝であれば、自社で東宝シネマズなどの映画館も所有しています。

この自社の映画館で放映するなら、 その分だけ配給収入の割合が高くなるということでしょう。

 

近年の大ヒット作と言えば、2016年の「君の名は。」で、興行収入が250億円です。(日本一は、千と千尋の神隠しで308億円)

その当時の東宝のリリースにもこんな表記がありました。

「君の名は。」などが好調だったので、業績予想を上回るというものです。

君の名は。1

君の名は。2

その他にも「シン・ゴジラ」や定番のアニメも伸びたと記載されています。

したがって「君の名は。」だけのインパクトは不明ですが、年間の売上で173億円、当期純利益としても11億円の増が当初の予想よりもあったとしています。

 

鬼滅の刃はどこまで行くのか

鬼滅の刃がどこまで興行収入を伸ばせるのかに注目です。

その鍵は、東宝の上方修正のリリースだと思います。

ここから完全に予想ですが、興行収入が100億円を超えた当りで、東宝としても業績予想の上振れのリリースを出す準備をするのではと思います。

これが早ければ10月の終わりに出る可能性すらあります。

 

そもそも会社の公式な業績予想は、上でも下でもブレが合った時点で公開するというルールになっています。

売上の場合は10%以上の乖離があれば、リリースが必要です。(利益は30%)

今期の予想の売上は、1,650億円と例年に比べ落ち込んでいます。

つまり、このブレが起きやすいということです。

1,650億円が基準なので1,815億円(+165億円)以上に売上がなりそうという時点で、リリースが必要です。

これが仮に前年の2,600億が予想とするなら、10%の上振れは2,860億円(+260億)となります。

 

言い換えると、業績予想の数値が小さいほど、修正リリースを出す基準額が小さくなり、それが起きやすいと言えるのです。

これが鬼滅の刃が、初日興行収入10億円スタートなら、1週間足らずで100億突破もあり得るというのが私の予想で、それによって業績予想の上方修正が出るということです。

 

もしくは、東宝の決算説明資料には興行収入が10億円以上の作品が記載されます。

ただし、これは2Qの決算が発表されたばかりなので、次に発表されるのが1月の中旬になりそうです。

ここに到達する前に、鬼滅の刃が圧倒的な数字を出して、東宝が業績の上方修正する可能性が高いでしょう。

 

東宝のライバルは?

東宝の同業他社として比較されやすいのが、下記の3社です。

  1. 松竹:売上は約1,000億円
  2. 東映:売上は約1,400億円
  3. KADOKAWA:売上は約2,000億円

ただし、映画という切り口で見れば、配給や興行収入で東宝がダントツのようです。

確かにヒット作品はほとんど東宝で、国内の会社ならロード・オブ・ザ・リングの松竹と、ONEPIECEの東映がランキングに出るくらいです。

 

今回の鬼滅の刃のヒットで、この構造はもっと差が広がりそうと言えそうです。

この勢いなら、2019年のアナ雪2(ディズニー)の134億円超えも視界に入っています。

まとめ

本日は映画鬼滅の刃が大ヒットで東宝の業績がどうなるかという話をしました。

まとめると、

  • 東宝は、阪急阪神ホールディングスが筆頭株主
  • 東宝は順調に業績を拡大してきた
  • ただし、今期は赤字ではないが苦しい状況
  • 収益の柱はやはり映画で、次に不動産事業
  • 興行収入は売上で、配給収入は営業利益のようなもの
  • 君の名は。のヒットでも上方修正のリリースが出た
  • 鬼滅の刃のヒットでも、上方修正が出る可能性が高い
  • 今期の予想の売上が少ないので、10月終わりまでにリリースされる可能性もある
  • ライバルはほぼ太刀打ちできない状況で、東宝がずば抜けている構造が続く

補足すると、会社の業績予想は鬼滅の刃がある程度はヒットする前提で作ってるはずです。

これをどれだけで見るかは難しいですが、予想の数値の中に大ヒットが織り込まれている可能性もあります。

しかし、恐らく会社の予想以上にヒットするでしょうし、鬼滅の刃を見るついでに他の映画も見ようという需要も生まれそうです。

このことから上方修正の可能性が高いのではと考えます。

 

※今回の話は投資行動を推奨・勧誘するものではありません。

投資は自己責任でお願いします。


鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックス)

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。