DOE(純資産配当率)を実際に調べて、いい会社を探す
本日は、DOE(純資産配当率)について紹介します。
きっかけはとある上場会社のリリースです。
配当を語る上で有名なのは配当性向ですが、DOEも近年注目されている指標です。
配当性向は知っているけど、DOEは知らないという人も多いのではないでしょうか?(実は私もそうでした)
これからは株主の意見が強くなる時代で、企業の配当についても議論になるでしょう。
実は短信の表紙にも出ている数字で、少し存在感が薄いと思っているのは私だけでしょうか?
上場会社100社のDOEランキングも最後に紹介します。
知っておいて損はない言葉ですので、是非最後までご覧下さい。
結論:配当性向とROEをダブルで満たす魔法の数字
とある会社のリリース
まずは、私がDOEを調べるきっかけとなった会社リリースを紹介します。
それは株式会社パシフィックネットという会社です。
パシフィックネットはIT機器管理サービスを提供しており、売上は50億円・当期純利益3.3億円程度の東証二部上場の会社です。
先日紹介した、ダイワボウからも商品を仕入れているようです。
www.finance-accounting-value.com
リリースの内容は、これまでは配当の方針を配当性向30%以上としていたものを、それプラスDOE5%以上を目指すよというものです。
発表してからパシフィックネットの株価が急激に上がるなどの反応は特にありませんでしたが、この会社の姿勢はポジティブに捉えることが出来ます。
DOEは(Dividend on Equity)の略です。
DOEの計算式は?
DOE5%と言われても何のことやらだと思いますので、早速DOEの計算式を紹介します。
DOE=年間配当総額/純資産(≒株主資本)×100(%)です。
株主資本と純資産の違いについては、ここでは詳細に説明はしませんが、2つを比較すると純資産の方が大きくなる性質があるので、以下では純資産を使用します。(株主資本に繰延ヘッジなどを加算したものが自己資本、自己資本に新株予約権などを加算すると純資産です。)
DOEは年間の配当額を純資産で割ったものとなり、大きい方が株主還元に積極的と言えます。
トヨタ自動車の例で考えます。
トヨタの配当総額は約6,100億円で、純資産は21兆2,400億円となるので、下記の計算となります。
DOE=6,100/212,400×100
=2.9%
トヨタ自動車の株主資本は20兆600億円なので、株主資本を使うとDOEが若干大きくなります。
DOE=6,100/200,600×100
=3.0%
会社によっては株主資本と純資産が全く同じこともあります。
DOEは配当総額を純資産で割ると説明しましたが、さらに分解すると次のようになります。
DOE=配当性向×ROE(自己資本利益率)
DOEは高い方が望ましいので、配当性向かROEを上げれば良いということになります。
配当性向とは稼いだ利益をどれだけ配当したかという指標で、高いほど利益を配当に回したことを意味します。
例えば、トヨタ自動車は当期純利益が2兆760億円で、そのうち6,100億円を配当に使っているので、下記となります。
配当性向=6,100/20,760
=29.3%
ROEは、当期純利益を自己資本(=純資産)で割ったものです。
これが高いほどコスパの良い効率的な経営が出来ているとされます。
トヨタ自動車なら、
ROE=20,760/212,400×100
=9.8%
四捨五入の関係で少しずれますが配当性向29%×ROE10%=2.9%というDOEになるということです。
長々と説明しましたが、DOEは高いほど優秀ということが一番伝えたいことです。
※厳密には純資産は期首+期末を2で割ったものを使いますが、簡便的に期末で計算しています。
ちなみにROEも下記の3要素に分割出来ますが、説明は割愛します。
- 売上高純利益率=売上/当期純利益
- 総資産回転率=売上/総資産
- 財務レバレッジ=総資産/自己資本
平均はどれくらい?
さて、上場会社の配当性向やDOEの平均はどれくらいなのでしょうか。
数字は毎年推移しますが、直近だと日本の上場会社は配当性向30%くらい、ROEは9%ぐらいとされています。
最初に紹介したパシフィックネットの資料によると、DOEは2.3%が平均となっています。
配当性向30%×ROE9%=DOE2.7%というのがざっくりのイメージで、厳密には2.3%ということでしょう。
なぜDOEが優れているかというと、配当性向とROEどちらも重視しているからです。
配当性向はPLに関わる指標で、ROEは純資産というBSが関わります。
PLは単年度での一喜一憂がありますが、BSは過去からの積み重ねです。
どちらも見ることで、より正確な会社の配当姿勢を見ることが出来ます。
高校生で例えるならPLは期末テストで、BSは模試みたいなものです。
期末テストでは成績がいいけど、模試ではそんなにという方もいるでしょうし、模試だけは得意という方もいるでしょう。
配当性向とROEどちらも重視される指標なので、DOEを重視した経営なら、例えば当期純利益が低くなりそうな場合は、配当を増やすという選択になるということです。
当たり前ですが配当をしていない会社はいくらROEが高くても、配当性向が計算出来ないので、DOEも計算出来ません。
上場会社は約3,700社、配当をする会社が約2,700社なので、割合では全体の27%が無配の会社となります。
上場会社トップ100のDOEを見てみる
最後に上場会社の当期純利益ランキング100社のDOE、配当性向、ROEを見てみます。
これで配当性向やROEは高いけど、DOEは低いという会社があることが分かるはずです。
当期純利益順に見るとトップはトヨタ自動車の2.1兆円で、100位がT&Dホールディングスの670億円です。
配当性向ランキング
1位:デンソー:159%
2位:キヤノン:136%
3位:日立製作所:105%
4位:ソフトバンク:85%
5位:ファナック:78%
100位:ネクソン:2%
平均:39%
有名企業が並び、100%超えも3社あります。
100位はネクソンでわずか2%、ネクソンはゲームの会社で投資優先ということでしょう。
平均は約4割という結果でした。
ROEランキング
1位:大東建託:32%
2位:ソフトバンク:28%
3位:野村総合研究所:24%
4位:東京エレクトロン:22%
5位:中外製薬:19%
100位:デンソー:1.9%
平均:10.3%
1位は意外にも?大東建託でした。
最下位のデンソーはわずか1.9%と、100社もあるとかなり差が出ます。
DOEランキング
1位:ソフトバンク:24%
2位:大東建託:16%
3位:東京エレクトロン:11%
4位:JT:10%
5位:中外製薬:9%
100位:ネクソン:0.3%
平均:3.8%
DOEランキングの1位はぶっちぎりでソフトバンクで、高い配当性向とROEが生み出したDOEでした。
社名がややこしいですが、これが携帯を展開しているソフトバンクで、親会社がソフトバンクグループとなります。
ROEで1位だった大東建託も2位にランクインです。
最下位は、配当性向が低かったネクソンとなりました。
平均は3.8%と、やはり全上場会社平均(2.3%)よりも高い数値となりました。
最初に紹介したパシフィックネットのDOE5%という目標も、なんと100社中15社しか達成していないそれなりにハードルが高いものになっています。
まとめ
本日はDOEという配当にまつわる指標を紹介しました。
まとめると、
- パシフィックネットが配当性向+DOE5%以上という配当方針を表明した
- DOE=配当総額/純資産×100で計算
- さらにDOE=配当性向×ROEと分解も可能
- PLの配当性向・BSのROEが要素なので、DOEが優れている指標
- 上場企業の全体のDOE平均は2.3%
- 上場企業の当期純利益トップ100のDOEを調べると、ソフトバンクがトップで24%だった
- トップ100のDOE平均は3.8%と、パシフィックネットの目標もそれなりのハードル
短信の表紙にも記載されているDOEですが、あまり注目していない人が多いのではないでしょうか。
自分で手を使って調べてみると、本当に面白いです。
上場会社の当期純利益トップ100に警備業で有名なセコムがランクインしており、こんなに稼いでいるんだと少し驚きました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。