食品スーパーで成長性や安定性から見ると、どこが優秀なのか?
今回は上場会社の食品スーパー30社を比較してみます。
ちなみに前回は中堅化学メーカー43社を比較しています。
そちらも似たような観点で見ていますので、見て頂くと業界毎の違いなどがよく分かると思います。
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今回はこちらの記事の売上上位20社+9社を私が選出し、29社での比較としました。
売上で言えば、30社で一番大きいのはライフコーポレーションの7,100億円で、最小はマルヨシセンターの380億円です。(29社平均は2,400億円)
13コの観点から総合ランキングを作り、1位となる会社はどこでしょうか?
是非、最後までご覧下さい。
結論:39ポイントが最高で、25ポイント取ったのはあの会社
上場会社の食品スーパー30社を決算書から分析・比較
企業を決算書の情報から行う財務分析には、3つの観点があります。
- 収益性:利益が稼げているかという観点
- 安定性:財務が安定しているかという観点
- 成長性:これから伸びるかという観点
食品スーパーの課題は、これから成長出来るかという点ではないでしょうか。
今回、決算書から分析した情報は前回同様13項目です。
これで1位なら3ポイント、2位は2ポイント、3位は1ポイントで総合ランキングを作ります。
最大で39ポイントとなる計算です。
個別のランキング、ベスト3位までと最下位と平均を記載
1. 収益性:当期純利益の金額の大きさ
1位:ヤオコー:125億円
2位:神戸物産:121億円
3位:ライフコーポレーション:78億円
最下位:マックスバリュ西日本:△53億円
29社平均:30億円
2. 収益性:当期純利益率
売上と当期純利益の比率
1位:神戸物産:4.0%
2位:ベルク:3.1%
3位:JMホールディングス:2.9%
最下位:マックスバリュ西日本:△1.0%
29社平均:1.3%
3. 収益性:5年間の平均当期純利益額
1位:ヤオコー:109億円
2位:アークス:89億円
3位:バローホールディングス:87億円
最下位:マルヨシセンター:△1億円
29社平均:33億円
4. 収益性:従業員一人あたり当期純利益
※臨時従業員も含む
1位:神戸物産:236万円
2位:ヤオコー:106万円
3位:ベルク:82万円
最下位:マックスバリュ西日本:△22万円
29社平均:40万円
5. 安定性:総資産
1位:バローホールディングス:3,839億円
2位:マックスバリュ西日本:2,654億円
3位:ライフコーポレーション:2,621億円
最下位:マルヨシセンター:177億円
29社平均:1,111億円
6. 安定性:自己資本比率
1位:アオキスーパー:67%
2位:ダイイチ:63%
3位:リテールパートナーズ:62%
最下位:マルヨシセンター:11%
29社平均:47%
※11%は、少し不安と言える
7. 安定性:現預金
1位:神戸物産:697億円
2位:アークス:442億円
3位:マックスバリュ西日本:334億円
最下位:北雄ラッキー:7億円
29社平均:146億円
8. 成長性:時価総額(投資家の期待)
1位:神戸物産:8,564億円
2位:ヤオコー:2,877億円
3位:ライフC:1,833億円
最下位:マルヨシセンター:28億円
29社平均:1,035億円
9. 成長性:5年連続で増収増益しているか?
1位:神戸物産
1位:ヤオコー
1位:JMホールディングス
※29社の中で、該当は3社のみ
10. 成長性:5年間での売上の伸びの額
※5年前と直近を比較
1位:マックスバリュ西日本:2,642億円
2位:バローHD:1,807億円
3位:ヤオコー:1,316億円
11. 成長性:5年間での売上の伸びの%
1位:リテールパートナーズ:199%
2位:マックスバリュ西日本:198%
3位:大黒天物産:146%
12. 成長性:5年間での当期純利益の伸びの額
1位:神戸物産:79億円
2位:ヤオコー:34億円
3位:ベルク:21億円
13. 成長性:5年間での当期純利益の伸びの%
1位:神戸物産:288%
2位:関西スーパーM:189%
3位:オークワ:175%
ベスト3発表
これらの総合ランキングのベスト3を発表します。
3位:8ポイントを獲得したマックスバリュ西日本(売上は5,300億円)です。
言わずと知れたイオンの子会社で、兵庫・中四国を中心に展開。
本社は広島にある会社です。
直近の本決算では赤字とは言え、時価総額や現預金、5年間での売上の伸びなどでランクインしました。
同じく四国でスーパーを展開するマルナカを2019年に買収し、この分で売上が2,700億円ほど増える計算になります。
ただし、利益面ではマルナカが29億円の赤字とはなっています。
2位:15ポイント獲得のヤオコー(売上4,400億円)です。
ヤオコーは関東を中心に展開するスーパーです。(関西在住の私は使ったことがない)
特に埼玉県に89店舗と全体の166店舗のうち、54%を占めています。
代表取締役は78歳で創業者という、小さな町の八百屋からスタートという背景がよく分かるものになっています。
売上の構成としては生鮮食品、加工食品、日配食品の順で多くなっています。
ヤオコーは当期純利益の額や、利益率、5年間の当期純利益など利益面での強さが目立ちました。
さらに5年連続で増収増益をしているなど、成長性の点でも素晴らしいです。
1位:23ポイントと圧倒的だったのは神戸物産(売上3,000億円)です。
とにかく業務スーパーで有名な神戸物産、店舗数が843店舗と多いのが特徴で、確かによく見かけるのも納得です。
将来的には1,000店舗を目指すようで、このままなら達成も十分に可能でしょう。
売上では7位ですが利益の額が大きく、当期純利益率は4%で1位となりました。
その他、現預金、時価総額でも1位、さらに5年連続で増収増益もしている成長企業です。
代表取締役は40歳と非常に若く、こちらも創業者一族出身ではありますが、これだけ若いなら自由な発想で会社をリードしてくれそうな印象です。
私も、一時期業務スーパーで色々と冷凍食品などを購入していましたが、とにかく何でも安いです。
10年前の大学生の頃に初めて行きましたが、当時はちょっと入りにくい雰囲気だったのを覚えています。(今は、知名度も上がって、もちろんそんなことはありませんが。)
まとめて作るという作り置きの需要も高まっていますし、業務スーパーが伸びるのは本当に納得です。
その他の観点
ここからはランキングには加点しない、色々な点から会社を比較します。
1. 代表取締役の年齢が高齢
1位:ライフC:94歳
2位:アークス:85歳
3位:バローHD:83歳
27位:JMHD:45歳
27位:オーシャンS:45歳
28位:ベルク:42歳
29位:神戸物産:40歳
29社平均:63歳
何とライフコーポレーションは94歳の社長です。
もうひとり代取として三菱商事出身の54歳の方もいますが、流石にこれではパワーバランスが悪いでしょう。
40代の社長も少しはいるものの、創業者がそのまま社長で高齢のケースが多いです。
2. 取締役会の女性人数と比率
1位:ヤマナカなど8社が2名
2位:1名だけが10社
3位:0名が11社
比率ではヤマナカの25%が一番高いという結果でした。
予想通り、それほど大きな差はありませんでした。
スーパーという業界を考えると、より女性の取締役の声が意味のあるものになるような気はします。
3. 一人当たりの役員報酬の高さ
1位:アクシアルリテイリング:4,100万円
2位:JMHD:3,500万円
3位:ヤマナカ:3,200万円
29位:リテールパートナーズ:600万円
※使用人兼務分を含んでいないもの
意外にも売上の上位10社の会社が、このベスト3には入っていませんでした。
あくまでも一人当たりなので、社長だけ高額というパターンもあり得るという点だけ誤解のなきようお願いします。
4. 社員数ランキング
※臨時社員含む
1位:USMHD:28,900名
2位:ライフC:28,200名
3位:バローHD:27,600名
29位:ダイイチ:1,390名
最も社員が多いのは、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスで、マルエツ・カスミ・マックスバリュ関東の会社でした。
不思議なのが、このUSMHDは売上では3位なのですが、今回のランキングでは1ポイントも取れなかったという点です。
大きいことが全てではないことを体現した結果でしょう。
ちなみに臨時従業員の占める割合が最も高いのはいなげやで82%、最も低い神戸物産で58%となりました。
5. 大株主の制約
スーパー業界は非常に創業者の影響力が強く、大株主に社長などの資産管理会社が出てくるケースがほとんどでした。
その中でバローホールディングスは、そういったことがなく、ある種自由な構成となっていました。
6. 1店舗当りの売上が大きいのは?
1位:ライフC:25億円/275店舗
2位:オーシャンシステム:23億円/10店舗
3位:ヤオコー:22億円/178店舗
最下位:神戸物産:3億円/843店舗
単純平均で見るとこうなっています。
7. 経理出身の社長はいる?
最後に気になったポイントとして、経理出身の社長は食品スーパーにいるのかを見ました。
1社だけ該当があり、関西スーパーの福谷社長が経理出身と判定出来ました。
29社中1社と、中堅化学メーカーの時同様、非常にレアなケースでした。
まとめ
本日は上場会社の食品スーパーを13コの項目で比較しました。
まとめると、
- 上場会社29社の食品スーパーを比較
- 収益性・安定性・成長性で見ると、神戸物産、ヤオコー、マックスバリュ西日本の順で優秀
- 食品スーパーは創業者社長が多く、大株主の制約も強い
- 単純に従業員数が多いだけでは、効率的な経営は出来ない
食品スーパーは差別化が難しい業種と言えます。
そうなると利益もそこまで稼げずに、従業員の給与も高いとは言えなくなってしまいます。
今後、テクノロジーによって店舗の従業員がいないことが当たり前になると、激変していくのかもしれません。
これからに注目したい業界です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。