ヤバいとはよく言われているペッパーフードサービスは、本当にヤバいのかを見てみます。
本日は、いきなり!ステーキで有名なペッパーフードサービスの、第3Qの決算を見て同社がどれくらいヤバいのかを調べます。
一部では騒がれているのは知っていますが、数字としてどうなのかを見ます。
GC注記・債務超過や店舗の閉店、ペッパーランチ事業の譲渡など気になるポイントを、経理マンの視点で解説します。
同じ外食チェーンの鳥貴族も最後に少しだけ登場します。
是非、最後までご覧下さい。
結論:思っていたよりはマシだったが、未来は明るくはない
GC注記って?
ペッパーフードサービスはGC注記付きの銘柄です。
GCとはgoing concernの略で、会社は継続が前提なのに、そもそもその前提がヤバいということです。
重要事象等の記載というものも別にありますが、これは黄色信号で、注記が赤信号です。
黄色信号の例はAppBank株式会社などがあります。
注記はありませんが、記載はあります。
現在GC注記がされている会社数は、上場会社約3,700社中、55社(1.5%)となっています。
この内、ペッパーフードサービスを含む、2020年に注記となった会社が21社です。
クレアホールディングスは2010年に注記がされ、10年が経過しているというケースです。
大塚家具も2018年から注記です。
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ペッパーフードサービスってどんな会社?
まずはペッパーフードサービスの業績や沿革などから紹介します。
社長を務める一瀬邦夫氏が創業者で、78歳の高齢です。
副社長として長男の健作氏が48歳となっています。
よくポスターで見かけるのが邦夫氏で、親父さんの若い頃の写真なのでしょう。
いきなり!ステーキがスタートしたのは、2013年12月です。
そして1年で30店舗達成します。
上場は2006年で、2015年には8期ぶりの復配と、配当が払えるくらい好調だったことが伺えます。
2016年8月にいきなり!ステーキ100店舗を達成。
その後、順調に店舗数を伸ばし、2019年12月には500店舗を出店するほどでした。
しかし、業績は2019年12月期つまり、直近の本決算で大きく悪化していました。
売上は順調に拡大し、220億から675億まで伸びています。
ちなみに外食チェーンのトップは「すき家」などのゼンショーグループで、6,300億円の売上です。
ペッパーフードサービスは利益が問題で、2017年12月期が利益のピークで13億円の黒字から、直近の本決算では27億円の赤字となっています。
さらにもう少しだけ業績を遡って見てみましょう。
2011年12月期から見ると、当時はペッパーランチ事業が主力で売上は52億円に過ぎませんでした。
そこからいきなり!ステーキがヒットし、2015年には162億円と3倍以上の売上となっています。
それが直近では675億ですから、売上は10年で10倍以上も成長したことになります。
利益面でも2,800万円だった当期純利益は5億まで成長し、ピークが13億だったことになります。
ペッパーフードサービスの拡大はいきなり!ステーキにあったのは間違いないでしょう。
2019年12月末時点の店舗数は、次のようになっています。
単純な店舗数ではペッパーランチの方が525店と多くなっています。
しかし、このペッパーランチ事業を譲渡し、いきなり!ステーキも店舗数が激減することになります。
セグメント毎の数値も見ます。
売上はいきなり!ステーキが570億で、ペッパーランチは88億程度となっています。
利益でもいきなり!ステーキが19億、ペッパーランチ12億で、ステーキで稼いでいることは分かります。
しかし、利益率で見るとペッパーランチの13.9%に対し、いきなり!ステーキは3.4%と10%も差がついているのです。
これはフランチャイズによる店舗比率を見ると、より不思議です。
ペッパーランチ事業のフランチャイズ率は86%で、いきなり!ステーキは34%に留まります。
フランチャイズ店の方が会社としてはロイヤリティのみになり、収益が少ないはずです。(単純に考えれば、いきなり!ステーキの方が利益が出そう)
※しかし、フランチャイズは黙っていても加盟店が稼いでくれるとも考えられ、逆?
つまり、事業そのものの性質として、いきなり!ステーキ事業は高収益ビジネスではないということでしょう。
ステーキ立ち食いというスタイルでもありますし、利益は小さいけどとにかく回転率を高めるのがポイントなのでしょう。
従業員はどんなバランスかと言うと、やはりいきなり!ステーキに75%と集中しています。
従業員が多いほど人件費が増えるので、これが利益率が悪い要因とも考えられます。
大株主の状況も少しだけ紹介します。
社長の邦夫氏と息子である副社長の健作氏はいいとして、2位エスフーズはどんな会社でしょうか。
実はエスフーズも上場会社であり、その名の通り食品会社で、ホルモンのこてっちゃんの会社です。
売上規模は3,500億円と中々の大きさです。
エスフーズからはペッパーフードサービスが食材の仕入れを行っていると記載されています。
その額が282億円とかなり高額で、これは売上原価が398億なので、なんと全体の7割もエスフーズから仕入れているというかなり密接な関係です。
直近の本決算の赤字から変わる
2年前は1.2億円の赤字で、その次が27億円の赤字ということで、ここからペッパーフードサービスが変化を強いられます。
3Qの決算を見ていきます。
今期途中からペッパーフード事業を売却したため、前年との比較がありません。
今期は四分の三が終わって利益は33億円の赤字と苦しい状況です。
通期での予想としては、39億円の赤字としています。
GC注記となった20年3月から、コロナウイルスの進行もあり、ペッパーフードサービスは資金調達を模索します。
その中で、ペッパーフード事業を譲渡し、資金を調達するという決断をしています。
また不採算のいきなり!ステーキ店舗を閉店し、なんと3Q時には354店舗と約150店舗も閉店しています。
さらに多くの店舗も閉店することもあり、希望退職募集もしています。
こちらの記事でも紹介していました。
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200名の募集に対し183名の応募があり、これは全従業員の19%にもなる大きなものでした。(単純な率では20年で2番目に大きかった)
BSを見ると債務超過になっています。
前期末(19年12月末)時点の自己資本比率はわずか2%しかなく、これがさらなる赤字で債務超過となってしまいました。
ただし債務超過の額としては、2.5億円と思っていたよりは大きくなく、まだなんとか出来そうなレベルです。
これには資本金の増も影響しており、それが第三者割当の新株予約権によるものです。
新株予約権とは株を発行する権利を与えて、基本的には第三者と会社は得をしますが、既存の株主からすると嫌なものです。
ペッパーフードサービスはGC注記解消に向け、以下のような対策を取っていると公表しています。
①コスト削減
②金融機関と連携
③ペッパーランチ事業譲渡で資金確保
④114店舗の閉店
⑤新株予約権による資金調達
もちろん、ヤバいのは確かなのですが、事前の想像よりはマシという印象です。
ただし、いきなり!ステーキだけでこの先逆転が出来るかというと、非常に難しいでしょう。
企業としては存続出来る年数は何年かあっても、また配当を払える様になる日は来ない可能性が高そうです。
鳥貴族に見る外食の難しさ
同じ外食産業の鳥貴族も店舗数が若干減っているという点で、少しだけ調べてみます。
こちらも2年前から赤字となっています。
もちろん、直近の決算には緊急事態宣言によるものなどの影響があるのは当然ですが、2期前も赤字となっています。
店舗数で見ても、若干の減となっています。
順調に600店舗を突破したものの、ピーク時から30店舗ほど減らしています。
鳥貴族と言えば、数年前までは外食業界で際立つ存在だったはずです。
その優良企業の鳥貴族でさえ、店舗拡大の際に苦戦するのが分かります。
外食産業の大きな壁は2つあります。
①ライバルが多い
とにかく競争が激しいのが外食産業です。
そもそもとして日本人の人口は減っています。
一人ひとりの食べる量も増えそうな気はしません。
となると、トータルの需要が減る中での、消耗戦になっていきます。
鳥貴族は280円均一で焼き鳥などが食べられるというキャッチコピーで、爆発的にリピーターを作りました。
しかし、どんな会社でも真似が出来てしまうのが外食業界です。
さらに、ジャンルも多種多様で、焼き鳥しか食べないなんて人はほぼいないのです。
②逆転が難しい
外食ビジネスはとにかく店舗拡大が合言葉のようなものです。
個性的なメニューを開発しても、すぐに真似されてしまいます。
いきなり!ステーキも鳥貴族も真似されている側です。
洋服の有名ブランドのようなブランド力に頼るのは難しいです。
なぜならスイッチングコストという切替の面倒くささもゼロなので、競争が絶えないのです。
その中で、店舗を減らすということは逆転が難しくなるということです。
今なら、普通の業態ではなく、テイクアウト専門店なんて業態もありそうですが、そこに投資する資金も生み出しにくいです。
鳥貴族が衰退していくとはまだ思いませんが、ペッパーフードサービスは未来が明るいとは言えなさそうです。
まとめ
本日はいきなり!ステーキのペッパーフードサービスは本当にヤバいのかという話をしました。
まとめると、
- ペッパーフードサービスはGC注記付き
- 社長は78歳で、副社長の長男の48歳
- 急拡大をしたいきなり!ステーキだが、利益率はそれほどでもないビジネス
- 同じ上場会社のエスフーズから7割仕入れるなど密接の関係
- 今期も赤字で、ペッパーランチ事業売却や、人員削減、店舗閉店などを行う
- 債務超過だが、額はそれほど大きくなく、新株予約権によって延命
- 優良企業だった鳥貴族も赤字で、店舗数も減らしている
- 外食産業はライバルが多く、逆転が難しい構造
思っていたより、ペッパーフードサービスはまだ戦える状態でしたが、先行きは暗い印象です。(やはり感覚だけでの判断は良くない)
外食産業の難しさを改めて感じた経理マンでした。
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初めて食べたら美味しかった件
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ここまでお読みいただきありがとうございました。