2020年の希望退職の上場会社を29社比較してみます。
ここ最近、様々な会社が希望退職募集をかけています。
例えば、avex、日本板硝子、セガサミーホールディングス、日立金属などです。
以前もコカ・コーラボトラーズジャパンの希望退職を紹介しましたが、今回は人数の比率ではどこが一番かなど比較を重視します。
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今回は2020年に募集を行い、退職人数が100名以上超えるケースのみを扱い、追加で募集をした場合は人数を合算します。
29社を比較し、ランキング形式で上位の会社を紹介します。
是非、最後までご覧下さい。
結論:5つの項目で比較、人員の多さだけではない視点で紹介
人員数が多いのは?
退職募集の人数が多い会社ベスト3は以下です。(予定の段階で応募人数が確定していない場合は予定を人数とします)
1位:日立金属3,200名(予定)
2位:日本板硝子2,000名(予定)
3位:LIXILグループ1,200名(予定)+497名
※LIXILグループは2020年に2回募集をしており、合算で約1,700名です。
1位が日立金属ですが、これはあくまでも予定であり、これだけの人員が退職すると決まったわけではありません。
しかし会社側の予定人数なので、それほど大きく下回ることも少なそうです。
日立金属も2期連続で当期純利益が赤字見込みと、厳しい状況での人員整理となっています。(前期376億の赤字、当期予想は460億円の赤字)
2位となったのは日本板硝子で、こちらも今期が赤字となることを受けてのアクションでしょう。
3位のLIXILは黒字予定ですが、今が改革の時として敢えて行うというパターンです。
全従業員に占める割合が高いのは?
次に募集人数と全従業員の関係を見てみます。
例えば、全従業員が1,000名の会社で100名が退職なら10%の割合となります。
この数値が大きいほど、インパクトが大きいとも言えるでしょう。
1位:第一商品(退140名/全245名、57%)
2位:ペッパーフードS(退183名/全957名、19%)
3位:廣済堂(退230名/全1,247名、18%)
1位となったのは、先物取引や金投資などを行う第一商品の57%。
第一商品は不適切な会計処理により行政処分を受けたりと、危ない会社とも言えます。
これだけ多くの人員が辞めるのは事業譲渡を行った影響で、東京・大阪・名古屋などの本店を除く10地点の事業所を廃止する影響が大きいです。
2位はいきなり!ステーキで有名なペッパーフードサービスの19%。
こちらも業績がかなり悪化しており、苦渋の決断として人員整理となっています。
外食ビジネスということで、逆転ホームランが生まれにくい構造とも考えられ、来年にはもう…なんてこともありそうです。
今期も赤字予想でこれで3期連続の赤字となってしまい、さらに債務超過とほとんどいい所がありません。
債務超過についてより知りたい方はレオパレスの例を基にこちらで解説しています。
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3位は印刷事業などを営む廣済堂で18%でした。
出版業界も先行きが苦しそうな業界で、廣済堂も350億円程度の売上しかなく、向かう先は茨の道と言えそうです。
直近の5回の決算で3回も赤字となっており、非常に苦しい状況です。
退職関連費用が大きい会社
退職にまつわる費用、例えば割増して支払う退職金などが思い浮かびます。
これが大きい会社は基本的には社員の給与が高い傾向があるでしょう。
1位:ファミリーマート(1,025名/150億円)
2位:東芝(770名/118億円予定)
3位:セガサミーHD(650名/100億円予定)
ちなみに人員で多かった日立金属や日本板硝子は、まだ費用については発表しておらず、1位が変わる可能性が高いです。
1位となったのはファミリーマートで、1,000名超で150億円としています。
ファミリーマートは伊藤忠の100%子会社となり、上場廃止となることでも話題になっていました。
これからは伊藤忠のリリースとして見ることになるしょう。
2位は東芝ですが、全従業員は約12万6千人なので、なんと全従業員の0.6%に過ぎないのです。
東芝の会社の規模からすると、人員としては少なく見えますが、影響額としては大きくなりました。
3位にはゲームのセガとパチスロのサミーの、セガサミーHD(ホールディングス)がランクイン。
希望退職と合わせ、役員報酬の減額も発表するなど、赤字拡大を食い止めるための人員整理と言えそうです。
そもそもHD(ホールディングス)って何?という方はこちらで確認しましょう。
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従業員の応募率が高かった会社
会社の予定人数と社員の実際の応募がどれだけ違っていたかを見てみます。(予定のみの会社は除外)
1位:日本ケミコン(予定100名/実際157名、157%)
2位:ワールド(予定200名/実際294名、147%)
3位:味の素(予定100名/実際144名、144%)
1位はアルミ電解コンデンサのメーカーである日本ケミコンの157%でした。
2位がアパレルのワールド、3位には食品の味の素もランクインしました。
ちなみに最も応募率が低かったのはラオックスで、2回目の募集で250名に対し、114名の応募と46%に留まる結果となりました。
この数値は会社側の予想や願望との乖離ということで、読みにくい数字なのでしょう。
おまけ:IRの姿勢が素晴らしい会社
最後にIRの情報公開に積極的で良いと思った会社を1社だけ紹介します。
それがavexです。
初の希望退職募集でニュースになっており、映像や音楽などのエンターテイメント事業を行う会社です。
希望退職募集のリリースがこちらです。
募集人数が100名程度で、対象者の該当人数が記載されています。
443名いて、会社としては100名程度を募集ということです。
このように該当人数まで公開している会社は見たことがありません。
しかし、こうやって記載してくれれば、実際の応募があった時にも参考になる情報です。
このような情報公開の姿勢を取れる会社は評価されるべきです。
反対に社名は出しませんが、◯◯人の予定ですとリリースを出しておきながら、なぜか実際の応募人数をリリースしない会社もありました。
流石に、人数は確定したでしょうから(もしくは中止にしたならそれはそれで公開すべき)、それを公開しない姿勢は全く評価出来ません。
まとめ
本日は2020年の上場会社の希望退職募集を比較してみました。
まとめると、
- 人数で一番多いのは日立金属の3,200名(予定)
- 募集人数の全従業員に占める割合が高いのは第一商品の57%
- 退職関連費用が大きいのはファミリーマートで150億円、ただしこれは日立金属や日本板硝子がそれよりも大きくなる可能性が高い
- 会社予定と実際の応募に差があったのは、日本ケミコンの応募率157%、ちなみに一番低かったのはラオックスの46%
- 情報公開の姿勢が素晴らしいのがavex
改めて数字で比較すると、インパクトが大きい会社が浮き彫りになると思います。
2021年もまとめてみたいと考えています。
動画版はこちら
ここまでお読みいただきありがとうございました。