経理マンが考える企業の財務分析のやり方
本日は経理マンが考える就活や転職で使える、企業財務分析の方法を紹介します。
きっかけは、自分自身の反省です。
就活の際も全然企業研究は出来ませんでした。
転職の際でも、経理職をしていたにも関わらず、上場会社だとしてもそれほど研究していませんでした。
それでも志望先の数字を知らなくて恥ずかしい思いをしたわけではありませんが、やはり数字を知っていればより色々なつなげ方が出来るでしょう。
今回は上場企業の有報(有価証券報告書)をベースに調べ方を解説します。
上場会社の分析方法がメインですが、上場会社の子会社の情報も、有報に記載されているケースがあります。
就活・転職だけではなく、株式投資にも共通した企業分析の仕方です。
私自身も知らない会社に出会ったら、この方法で企業の概況を理解するようにしています。
「何だ当たり前じゃん」という内容かもしれませんが、自分はこれさえもしていなかったので、きっと参考になる方がいるはずです。
結論:分析とは分けることである
ダスキンを例に分析
今回はダスキンを例に分析をしてみます。
皆さんはダスキンと聞いて、どんなイメージを持つでしょうか?
ミスタードーナツ?それともモップでしょうか?
どちらの事業も展開していますが、では稼いでいるのはどっち?と訊かれると答えることが出来ない方が多いのではないでしょうか。
会社は事業を複数持っていることが多く、ダスキンのようにモップなどのダストコントロールという事業と、ドーナツのような飲食店と、全く別の事業を展開していることも多々あります。
分析のポイントは、細かく分けるということです。
分けて考えることで、違いが鮮明になります。
資料については、会社HPに有報を紹介しているページがあります。
そして直近の年に1回の本決算時の、有報を見ることを強くオススメします。
もしくは本決算の決算短信を見ましょう。
ステップ①売上と利益を見る
まずは売上と利益を見ましょう。
有報には直近の5年分が最初の方に記載されています。
連結と単体がある場合は、連結の数値を見ましょう。(連結→単体の順に記載されています)
www.finance-accounting-value.com
利益については、営業利益、経常利益、当期純利益などがありますが、好きなものを選んでOKです。
有報の推移には経常利益と当期純利益が記載されています。
ただし、利益を他社と比較する際などには、同じ利益でないと比較の意味がありませんので、注意しましょう。
例えばマクドナルドの経常利益と、モスバーガーの当期純利益を比較しても無意味です。
ダスキンの推移を見ると、非常に興味深いです。
売上は5期前の1,650億円がピークで、微減という動きです。
ただし当期純利益は売上が減少したにも関わらず、ほぼ倍増しています。
利益のピークは、2019年3月期で約60億円です。
売上減でも利益増なら、素晴らしいことなので、こういった気になる部分をメモしておき、その理由について資料から探るとなお良いです。
ここで大事なポイントは売上と利益をどっちが大事かというと、利益の方が大事ということです。
これは営業の方ならよく聞く言葉かもしれませんが、売上にはマイナスという概念はほぼありません。
しかし、利益には売上が増えたのに、結果利益では赤字ということがあり得ます。
ただ売上と知名度はリンクしているので、売上が大きい会社がよく知られていることがあります。
マクドナルドの売上は知っていても、利益まで知っている人は少ないでしょう。
つまり、利益にフォーカスすれば、人が知らないことを知れる可能性があります。
②セグメントに分解する
次に見るのはセグメント情報です。
セグメントとは事業毎の分野を分けたもので、会社が自由に設定することが出来ます。
もちろん、単一事業だからセグメントが一つで、この部分を省略する会社もあります。
ダスキンのセグメントが下記です。
セグメントの前提についても記載されているので、参考にしましょう。
ダスキンは化粧品もやっていますし、トイレにあるキャビネットタオルや浄水器、家事代行など幅広い事業です。
一方でドーナツ以外にもとんかつの「かつアンドかつ」も展開しています。
売上が大きいのは、訪問販売の訪販グループです。
セグメントで売上と利益を見る際には、利益率にも注目しましょう。
訪販グループの利益率は10.4%、フードサービスは1.9%とやはり外食産業はあまり利益率が高くないビジネスだと分かります。
さらにセグメント毎の従業員もチェックすれば、人員をかけて利益が高いのか、 それとも人員は少なくて利益が出ているのかを確認出来ます。
単純な売上ベースでは訪販グループは、フードサービスの3倍程度ですが、人員は5倍です。
やはり訪販という形態であるので、人員も多く必要ということが分かります。
またこれを見れば自分が営業をするなら、どの事業に配属になる可能性が高いかも予想出来ます。
セグメント毎の今年の概況についても記載があるので、何故この事業は今年は調子が良かったのかなどの理由も知ることが出来ます。
会社の内部の人が持っている情報なので、信頼性は高いです。
もちろん、ポジショントークという自社のアピールしたいことを言っているということも念頭に置いておきましょう。
③会社の基本情報を抑え、比較する
その他にも有報には、様々な情報が記載されています。
例えば、平均年齢・平均勤続年数・平均給与などもあります。
これらの数値は他社と比較すると、より凄さなどの意味が理解出来るはずです。
ちなみに平均勤続年数の全体の平均は12年なので、ダスキンは良い企業と考えることも出来るかもしれません。
他にも役員の状況という社長などの偉い人のキャリアが確認出来ます。
ダスキンの社長は11年前に就任しており、在任期間としては長い方です。
少し古いですが2012年の調査では、トップの在任期間は7.1年が平均です。
創業者社長かつカリスマであれば、長期化してしまう傾向があるでしょう。
しかし、その社長に依存していることになるので、後任を育てるという点でも10年以上社長に留まるのは避けるべきだと思います。
また社長を退任して会長になるという人事もありますが、これも歓迎すべきではない動きでしょう。
同じ人がずっとトップに立ち続けると、不正が発生する確率も上がってしまいます。
銀行員の異動が多いのは、不正防止の観点もあるそうです。
そして大株主の状況もチェックしましょう。
これは会社の決定に影響を与える存在トップ10です。
ダスキンの場合は、飛び抜けた存在はなく、1位が6.5%です。
これが10%以上所有している株主がいれば、かなりの影響力があることになります。
2位には上場会社の日本製粉となっており、恐らくドーナツに使うための材料で取引先なのではないか?と考えることも出来ます。
日本製粉で有報内を検索すると、確かに仕入先であり、日本製粉がダスキンの株を持っていて、ダスキンも日本製粉の株を持っているという株式持ち合いという状態であることも分かります。
こういった様々な情報を比較するということが大事です。
この部分ではA社が勝っていて、別の部分ではB社が勝っているというように、全てを満たす会社は少ないでしょう。
自分の重視するものを整理すれば、自ずと志望したい会社も定まるでしょう。
これは就活の軸なんて表現もされます。
ボリュームの関係で上場子会社の場合はまとめきれていませんが、またの機会に紹介します。
まとめ
本日は企業分析を有報からするやり方を紹介しました。
まとめると、
- 上場会社なら情報がかなり多く公開されており活用すべき
- 分析とは分けて比較することである
- 売上や利益から概観を掴む、より大事なのは利益
- その利益はどのような事業から生まれているのかを見る
- そして平均給与や勤続年数、役員の状況や大株主を確認し、自分の重視するものを考える
- 他社と比較すれば、その数値が良いか悪いかが分かる
今回は取っ掛かりとして主にPL(損益計算書)を中心に紹介しました。
またの機会にBS面や、上場会社の子会社についてもまとめようと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。