マクド、牛丼、うどん、コーヒー、焼き肉、どんな会社がトップになる?
今回は外食産業の47社を決算書(有報)から分析してみます。
いつも利用している会社はどんな立ち位置なのか、ランキングがより身近に感じられるはずです。
前回はスーパーを見ました。
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その前は中堅の化学メーカーです。
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とある会社は年間で~億人も来店しているらしいです。(答えはランキングで)
それだけ大きな規模なので、まずは外食産業の規模を見て、各ランキングに入っていきます。
目次もありますので、ご活用下さい。
- マクド、牛丼、うどん、コーヒー、焼き肉、どんな会社がトップになる?
結論:65ポイント上限で、30ポイントを取って1位になったのはあの会社
外食産業の市場規模とは?
まずは外食産業の市場規模はどれくらいかを明らかにします。
2019年のデータです。(一般社団法人日本フードサービス協会のものです)
外食産業の全体が26兆円です。
ちなみにこれとは別に、料理品小売業という惣菜や駅弁などが約7.8兆あります。(これも含めると34兆円)
この26兆円の内訳が給食主体(21兆)と料飲主体(5兆円)で、料飲主体とは喫茶店・居酒屋・料亭などの飲むことが主体のお店です。
給食はそれ以外で、営業給食(17.7兆円)と集団給食(3.4兆円)に分かれます。
この集団給食が正に「給食」で、学校や社員食堂、病院などで提供されるものです。
営業給食が普通の「外食」で、レストランなどの様々な外食の場を指します。
今回の本記事で取り扱うのは、営業給食の17.7兆円と、喫茶店・居酒屋等の2.2兆円の計20兆円くらいのパイの取り合いとなります。
上場会社の外食産業のカテゴリの会社の売上を全て足すと、5.5兆円となり、外食産業にもたくさんの非上場会社が参入していることがよく分かります。(※ただし決算期がバラバラなので、あくまでも想定)
日本の人口は1.2億人で、90%の1億800万人が外食を利用すると仮定するなら、年間で18万円使う、1ヶ月なら1.5万円くらいでしょうか。
皆さんはこれより多いですか?(自分は外食少な目なので、これより少ないイメージ)
今回のターゲットは売上300億以上
外食産業のトップの会社は「すき家」などのゼンショーホールディングスで、売上は約6,300億円です。
上場会社で一番小さいもので、「山小屋」などのブランドを持つワイエスフードの15億円という数値があり、全部で約103社上場しているようです。
その中から今回は売上300億円以上の47社を決算書から分析します。
ちなみに、ギリギリ300億を超えたのが「大阪王将」を運営するイートアンドでした。
この売上300億というのは上場会社の大きさの基準として、過去の記事でも紹介したものです。(300億超えていれば大きい会社と定義出来る)
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47社を3つの属性で、13コの観点から見る
企業を決算書の情報から行う財務分析には、3つの観点があります。
- 収益性:利益が稼げているかという観点
- 安定性:財務が安定しているかという観点
- 成長性:これから伸びるかという観点
今回もこの3つの点を見ていきます。
今回は47社と多いので、ランキングのポイントも上位5位までとしました。
1位なら5ポイントで、順に下がり5位なら1ポイントという仕組みです。
13コのチェック項目があるので、理論上の最大値は65ポイントとなります。
1. 収益性:当期純利益の金額の大きさ
1位:日本マクドナルドHD:169億円
2位:ゼンショーHD:120億円
3位:スシローグローバルHD:100億円
4位:すかいらーくHD:95億円
5位:ドトール・日レスHD:61億円
最下位:ジョイフル:△93億円
47社平均:15億円
2. 収益性:当期純利益率
売上と当期純利益の比率
1位:コメダHD:17.3%
2位:アークランドサービスHD:7.5%
3位:壱番屋:6.4%
4位:王将フードサービス:6.19%
5位:ハイデイ日高:6.16%
最下位:ジョイフル:△14.9%
47社平均:0.9%
3. 収益性:5年間の平均当期純利益額
1位:すかいらーくHD:139億円
2位:ゼンショーHD:85億円
3位:日本マクドナルドHD:66億円
4位:スシローグローバルHD:64億円
5位:ドトール・日レスHD:61億円
最下位:ジョイフル:△24億円
47社平均:21億円
4. 収益性:従業員一人あたり当期純利益
※臨時従業員も含む
1位:ドトール・日レスHD:193万円
2位:ダスキン:67.7万円
3位:松屋フーズHD:67.6万円
4位:すかいらーくHD:61万円
5位:コメダHD:60万円
最下位:梅の花:△22万円
47社平均:3万円
5. 安定性:総資産
1位:すかいらーくHD:4,540億円
2位:ゼンショーHD:3,659億円
3位:コロワイド:2,488億円
4位:日本マクドナルドHD:2,217億円
5位:トリドールHD:2,100億円
最下位:ダイナックHD:149億円
47社平均:809億円
6. 安定性:自己資本比率
1位:あみやき亭:84%
2位:サンマルクHD:82%
3位:ドトール・日レスHD:81%
4位:ハイデイ日高:80.7%
5位:サイゼリヤ:78%
最下位:ジョイフル:1%
47社平均:48%
※ジョイフルは利益が出ておらず、債務超過も見えている水準
7. 安定性:現預金
1位:日本マクドナルドHD:586億円
2位:サイゼリヤ:432億円
3位:ドトール・日レスHD:373億円
4位:コロワイド:322億円
5位:ゼンショーHD:289億円
最下位:ダイナックHD:6億円
47社平均:133億円
8. 成長性:時価総額(投資家の期待)
1位:日本マクドナルドHD:6,913億円
2位:ゼンショーHD:3,698億円
3位:すかいらーくHD:3,329億円
4位:スシローグローバルHD:2,861億円
5位:アトム:1,661億円
最下位:梅の花:28億円
47社平均:941億円
9. 成長性:5年連続で増収増益しているか?
※47社の中で、該当なし
10. 成長性:5年間での売上の伸びの額
※5年前と直近を比較
1位:ゼンショーHD+1,047億円
2位:日本マクドナルドHD+923億円
3位:スシローグローバルHD+629億円
4位:トリドールHD+608億円
5位:JFLAHD+574億円
最下位:ワタミ△373億円
平均+140億円
11. 成長性:5年間での売上の伸びの%
1位:ペッパーフードサービス+417%
2位:JFLAHD+344%
3位:DDホールディングス+193%
4位:トリドールHD+164%
5位:アークランドサービスHD+159%
最下位:ワタミ+71%
平均+126%
※ペッパーフードの急拡大はこちらの記事でも解説しています。
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12. 成長性:5年間での当期純利益の伸びの額
1位:日本マクドナルドHD+519億円
2位:ゼンショーHD+80億円
3位:スシローグローバルHD+62億円
4位:ダスキン+26億円
5位:大庄+22億円
最下位 :コロワイド△173億円
平均△2億円
13. 成長性:5年間での当期純利益の伸びの%
1位:JFLAHD+340%
2位:ゼンショーHD+300%
3位:スシローグローバルHD+263%
4位:日本KFCHD+214%
5位:ダスキン+187%
※黒字から赤字パターンがあるので最下位と平均は割愛
外食産業の優秀な会社ランキングのベスト5発表
5位からランキングを発表します!
5位は13ポイント獲得のドトール・日レスHDです。(売上1,300億円)
その名の通り、ドトールコーヒーと、星乃珈琲店などの日本レストランシステムの合体した会社です。
セグメントで見ると、次のようになっています。
売上はドトールコーヒーが大きいですが、利益率では日本レストランシステムが9.4%とドトールの6.1%を上回っています。
ドトール・日レスの特徴は、自己資本比率の高さや、現預金、そして一人あたりの利益が一番大きかったです。
つまり少ない人数で利益を上げられるという理想のシステムです。
今期予想の当期純利益は80億円の赤字です。
4位は16ポイント獲得のスシローグローバルHDです。(売上は2,000億円)
回転寿司のスシローです。
店舗数は寿司業界No.1の559店舗と、数の原理で強さを見せます。
社名については、FOOD&LIFE COMPANIESに21年4月変更予定となっています。
海外でも展開しており、台湾に20店舗、香港に5店舗などアジアが全てです。
各ランキングでは1位はなかったものの、当期純利益額や時価総額、5年間での売上・利益の伸びなど幅広くランクイン。
今期の当期純利益の予想でも、105億円の黒字を見込むなど逆境でも強さがあります。
3位は17ポイント獲得のすかいらーくHDです。(売上は3,800億円)
すかいらーくは「ガスト」や「バーミヤン」で有名です。
その他にも、ジョナサン、しゃぶ葉、無庵、ステーキガストなどがあります。
セグメントは分けておらず、これらの業態の名前は違えど、利益率は似ていると有報に記載があります。
全体で3,200店舗あり、年間約4億人が来店するとのことで、すかいらーくグループは目にする機会が多そうです。
すかいらーくは5年間での平均当期純利益額、総資産が1位、時価総額でも3位など、安定性があると言えます。
ただし今期は落ち込み、当期純利益は150億円の赤字予想です。
2位は29ポイント獲得の日本マクドナルドHDです。(売上は2,800億円)
説明不要のマクドナルド、店舗数は2,900で直営店が7割、FCが3割という構成です。
他の会社は複数のブランドがありますが、ハンバーガーだけでここまで強いのだからすごいです。
ちなみにモスバーガーの売上は690億円と、マクドナルドの四分の一程度です。
ドライブスルーやウーバーイーツでの宅配など、これからに強そうなハンバーガーというスタイルです。
牛丼ならテイクアウト、店内での飲食で容器が変わってきますが、マクドナルドなら恐らく同じで効率面で強いでしょう。
マクドナルドは当期純利益の額や時価総額、現預金で1位でした。
さらに5年前と比較して売上と利益ともに伸びたという会社です。
2015年12月期は350億の赤字と苦しい時期でしたが、それを乗り越えた強さがあります。
今までは米国の本部の意向が強かったようですが、一部株式を売却する予定など、少しずつ変化も見えます。
今期の当期純利益予想は182億円の黒字です。
1位は30ポイント獲得のゼンショーHDでした。(売上は6,300億円)
様々なブランドがあり、カテゴリごとに紹介します。
- 牛丼カテゴリー:「すき家」、「なか卯」
- レストラン:ファミレス「ココス」、「ビッグボーイ」、「ジョリーパスタ」、焼肉の「宝島」
- ファストフード:「はま寿司」、ラーメンの「伝丸」、「モリバコーヒー」
社名の由来は全部勝つの「全勝」、「善意の心で商売」から来ているそうです。
海外にも中国、マレーシアなどに店舗があり、全て合算すると9,800店舗という驚異的な数字です。
一方で、外食以外もマルヤ、マルエイなどのスーパーマーケット事業も行っているのがゼンショーです。
スーパーマーケット事業は全体の13%の売上です。(約830億円)
利益率は外食が3.7%に対し、スーパーの小売事業は0.7%とかなり差があり、外食事業に支えられていることがよく分かります。
今期の当期純利益予想は10億円と、ここだけ見ると、マクドナルドに軍配が上がります。
ランキング以外の要素
今回は2つだけランキング以外の要素を紹介。
1. 一人あたり役員報酬が一番高いのは?
1位:すかいらーくHD:1.3億円
なんと5人で6.6億と、1億円以上が平均という高い数値でした。
2位は7千万なので、かなりの差がありました。
2. 経理出身社長は?
経理という括りが適切かは微妙ですが、サンマルクHDの難波社長は公認会計士の資格を持たれている方でした。
しかも42歳と非常に若い方です。
ちなみにサンマルクの取締役会のメンバーは13名で、そのうち4名が会計士の資格を持っている方です。
上場会社の取締役会(監査役含む)には、会計士出身の方が90%以上の確率で少なくとも一人はいる感覚です。
ただ、会計士出身で社長というケースは超レアで、私は他に「情報企画」という会社の松岡社長くらいしかそのケースを知りません。
CFOなどに会計士出身というのはよくありますが、社長になるのは非常に珍しいのです。
そんな珍しいケースでさらに若いので、サンマルクのこれからにも注目です。
まとめ
本日は外食産業の上場会社47社を比較してみました。
まとめると、
- 外食産業の市場規模は30兆円
- その中で、 20兆円くらいが外食や喫茶店・居酒屋
- 収益性・安定性・成長性で見ると、ゼンショー、マクドナルド、すかいらーく、スシロー、ドトール・日レスの順で優秀と言える
- ただし、今期の予想では赤字の会社や大幅減益の会社もあり、明暗が分かれる結果に
- サンマルクの社長は会計士出身で42歳と非常に珍しい
5年連続で増収増益を果たした会社がゼロなど、非常に競争が激しい外食産業です。
テイクアウトや宅配が鍵になるでしょう。
変化の中でどのようなアクションを取るのかにも注目です。
3年後に同じランキングを作ったら、すごく変動がありそうな業界でした。
動画版はこちら
ここまでお読みいただきありがとうございました。