まさかの創業者から会社が訴えられるとは驚きの展開です。
高級フレンチレストランなどを運営するひらまつが、元社長に訴えられるという不思議なニュースを見かけました。
今回はこのニュースをベースとして、カルロス・ゴーン氏の問題の時にも言われた利益相反取引とオーナー企業について説明をします。
ニュースも不可解ですが、やはりその影には、大株主の存在が大きいのです。
是非、最後まで見て、利益相反とオーナー企業について詳しく知りましょう。
結論:上場会社のオーナー企業では、問題が発生しやすい構造である
ひらまつとは?
まずはひらまつという会社から紹介します。
レストランやホテルを運営する会社で、レストランは各地にありますが、店舗としては首都圏が一番多いです。(23店舗中、首都圏が13店舗)
PLの推移がこちら
売上としては118億円から徐々に減少しており、直近の年間の売上は99億円、利益については右肩下がりになっており、直近の当期純利益は約20億円の赤字となっています。
ちなみに、継続企業の前提に関する重要事象等の記載がされており、企業経営に黄信号が出ています。(※継続企業の前提に関する重要事象等の注記だと、さらにヤバい状態)
元社長からの訴えというニュースの経緯
ここから、会社のリリースを見ていきます。
つまり、会社側の言い分を紹介するということです。
まずは、ひらまつ総合研究所から訴訟を提起されたと発表。
訴えについては、協議している中でのことで、極めて遺憾である。
訴訟を提起したのは、ひらまつの創業者である平松博利氏
訴訟をまとめると、
①コンサルの委託料として3.4億円と遅延損害金
②店舗の事業譲渡契約を解除したことにより、原状回復が必要であり2.4億円と遅延損害金
③ひらまつの株式(200万株)の譲渡代金として6.6億円(332円×2,000,000株、この332円はどこから出てきたのかはよく分からない)
以上の計、12.4億円+遅延損害金を求める訴訟
会社側としては、いずれも認められるものではないという認識で、業績に対する影響も未確定としています。
つまり、元社長の平松氏には支払いは発生しないと考え、業績予想などにも織り込んではいないということでしょう。
元社長かつ創業者かつ大株主
ここで平松氏について考えてみましょう。
まずは2020年3月末の株式数から確認します。
平松氏の所有株式数は5,250,100株で、その内の200万株を会社に譲渡しようということです。
仮に譲渡しても、今の所は筆頭株主になります。(筆頭株主とは、その会社の1位の所有株式を持っているということ)
2年前の情報を見ると、4,406,000株で、84万株ほど増加していることが伺えます。
社長が平松氏から交代したのは、2016年6月末の株主総会時なので、約4年前となります。
ちなみに役員退職慰労金は採用していないので、創業者特別功労金として平松氏に5億円が支払われています。(今までお疲れ様のボーナスみたいなもの)
当時の社長(平松氏)が後任として指名したのが、陣内氏と服部氏となります。
しかし、4年後の2020年6月に社長を外部から招集しています。
新社長の遠藤氏はマクドナルドでゼネラルマネージャーなどを務めた人物です。
この影には、アドバンテッジアドバイザーズという会社が関わっているようです。(2019年から事業提携をしている会社)
ここまでが平松氏とひらまつという会社の歴史です。
問題点はどこにある?
会社リリースにもあったように、元社長の平松氏とひらまつはコンサルティング契約を結んでおり、ホテルなどの出店計画などを相談していたようです。(実態は、恐らく平松氏の言いなりだった)
このフィーというのが適正だったのかというのは、会社にしか分からないことなのですが、仮に高すぎるものとして考えてみましょう。
会社としては、より高い報酬を支払えば利益が減ってしまいます。
しかし、平松氏としては利益が増えるということになります。
そして平松氏は大株主でもあるので、会社からの配当という形でも収益を得ることが出来るはずです。
つまり、会社へのコンサルフィーを下げれば、ひらまつという会社は利益が増え、株主である自分に配当という形で返ってくるということです。
しかし、そうはせず、高いコンサルフィーを取り、さらには訴訟の提起まで起こすという選択を取ったことになります。
訴訟となって、会社側が負ければ、その12億円なりが平松氏に入ってきますが、配当が減るでしょう。
逆に、会社側が勝てば、会社の利益は減らないので、平松氏への配当が増える可能性があります。
このような状態というのが、利益相反取引と言って、自分という個人が得をするが、会社にとっては損失ということです。
カルロス・ゴーン氏も、私的な費用を会社のお金として使っていたことがきっかけとなって、最終的には社長を追われることになりました。
ひらまつも会社の成績は悪いという状態なので、何が何でも生き残るために必死です。
国税の格好の的
会社側の平松氏との契約の解除については、それが正しいと思います。
いつまでも、不透明な報酬を支払い続ければ、会社そのものがダメになってしまいます。(既に手遅れの可能性もある)
こうして訴訟を起こされたことで、事実を公開するしかないという状況になりました。
会社の言い分だけを見れば、会社を応援したくなります。
一方、こういった会社が不当に高い報酬を、別の会社に支払う取引には、税務上のリスクがあります。
つまり、国税局から目をつけられる可能性が非常に高いということです。
利益を得ている側、つまり平松氏(ひらまつ総合研究所)は、その利益に応じて法人税を支払う必要があるので、特に問題はありません。
しかし、費用を支払う側、ひらまつという会社は、一般的な相場よりも高い報酬を支払うには根拠が必要なのです。
しかも、その相手の会社が元社長かつ創業者なのですから、契約を断れないという圧力があるようなら、その契約の妥当性を責められる可能性が高いです。
つまり、とにかく早く不透明な契約は解除しなければ、国税という観点でもまずかったということです。
やはりオーナー企業にはこのようなリスクがあります。
オーナー企業=悪と言いたいわけではない
以前の記事にありますが、似たようなケースとして、カンダホールディングスの例があります。
カンダHDの場合は、社長が問題を起こしたわけではありませんが、取締役の不正を見抜けなかったということです。
www.finance-accounting-value.com
私は記事の中でも、オーナー企業であることも不正の防止が出来なかった要因ではないかと書きました。
勘違いしてほしくないのは、オーナー企業だから悪いと言いたいわけではないということです。
主張したいことは、オーナー企業が問題を起こしてしまうと、「やっぱりオーナー企業はガバナンスがガバガバ」なんて思われてしまうということです。
近年は不祥事を起こしてしまった上場会社は、ガバナンスの改善を求められることが多く、その声も厳しさを増しているように感じます。
その声に答えるべく、取締役会のメンバー構成を社外取締役を増やすなどの対策を取る会社もあります。
不正を起こさずとも、そういった経営の透明化を図る会社は増えています。
どんな会社も大抵最初は、オーナー企業です。
しかし、上場会社であれば、早目にオーナー企業は卒業してほしいと思います。
株主が多様であれば、株主のための決定がより重要になると思います。
まとめ
本日は元社長に訴訟を提起されたひらまつのニュースを紹介しました。
まとめると、
- ひらまつは近年業績が落ち込んでいる
- そんな中、元社長かつ創業者から訴訟の提起があった
- 会社の言い分を見る限り、オーナー企業であるゆえの問題
- このような取引は利益相反になる
- かつ国税局に指摘されるリスクが高い
- オーナー企業だから悪いわけではなく、仕組みとして不十分な時代になっている
- 上場会社なら早目に、オーナー企業から卒業すべき
決定版 これがガバナンス経営だ! -ストーリーで学ぶ企業統治のリアル
この記事を見てから、調査報告書の記事を見れた方はラッキーです。
www.finance-accounting-value.com
動画版はこちら
ここまでお読みいただきありがとうございました。