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【経理の不正】カンダHDがまたしても不正が発覚、今度は給与水増し振込

【経理の不正】カンダHDがまたしても不正が発覚、今度は給与水増し振込

【経理の不正】カンダHDがまたしても不正が発覚、今度は給与水増し振込

2020年になって、2度目の不正発覚はかなりびっくりです。

本日はカンダホールディングスの給与水増し振込の不正について語ります。

ニュースを見た時、あれなんか既視感があると思ったら、なんと2020年1月にも問題を起こしていました。

www.finance-accounting-value.com

前回の交際費の不正請求は約3,300万円で、今回はなんと7.2億円の影響額でした。

なぜこんな不正が起こるのか、仕組みの問題についても記載します。

なんと20年に渡って不正が気づかれなかったという珍しいケースです。

ここから学びがたくさんあると思い、この記事を作成します。 

結論:規模が小さく監査をすり抜けた可能性と、オーナー会社の功罪

カンダホールディングスとはどんな会社?

簡単に、この会社について紹介します。

kanda-web.co.jp

連結の売上が440億、営業利益が18億といった規模です。

従業員は2,300名程度、事業としては下記になります。

  • 貨物自動車運送事業
  • 国際物流事業
  • 不動産賃貸事業

ドラッグストア(特にスギ薬局)向けの配送も行っているようです。

連結子会社数は26社です。

前回の不正の概要

まずは今年2020年の1月の終わりに発覚し、2月に調査が終了した事件となります。

カンダ2

カンダHDの専務取締役を務め、株式会社カンダコアテクノ及び株式会社レキストで代表取締役(社長)を兼務していた人物が、交際費を不正に申請していたというものです。

2015年からの5年間で、3,260万円の着服が確認されました。

カンダ1

交際費として申請はされていたが、それは実態がないものだったということです。

例えるなら、店舗は利用していないのに、領収書に架空の金額を記載し、それを申請することで不正に会社からお金を受け取っていたということです。

そして、その人物は各社の取締役を辞任することとなりました。

この株式会社レキストが、今回の事件でも登場することになります。

 

今回の不正の概要(給与の水増し振込)

今回の不正を行った人物は、株式会社レキストの取締役管理本部長で、なんと2000年から20年に渡って不正を行い続けていたということです。

この手口としては、複数の口座に本来の給与と不正に水増しした給与を、自らの手で振り込んでいたという古典的なやり方です。

給与だけでなく、賞与の時にも不正をしていた模様です。

その金額が20年間で、7億1,900万円だったということです。

1年の平均で考えると、約3,600万円です。

これだけ大きいと止めようと思っても、逆に影響額が大きくて、引き返せなかった可能性はあります。(仮に年収400万円の人なら、9人も雇えるような金額)

カンダ3

このお金については、当人からの回収可能性が低いと会社は判断しているようです。

 

会社側は、発覚が遅れた理由を3つ挙げています。

①該当の取締役が設立以来、給与振込や会計事務を含め、唯一の担当者だったこと

②グループ各社に、給与システムの変更を勧めたが、同社だけ頑なに拒否したことで、容易に不正が行える状況だったこと

③振込の明細表が隠せる環境だったこと

 

今後の対策として5つ挙げています。

① 人事の固定化を防ぐ方策の強化

10 年以上異動のない役職員(特に経理処理担当者)については、リストアップし人事異動。

業務のローテーションを行い、他の業務を理解する機会を増やし、他者の業務に対して無関心でいられる職場環境を改善。

 

② 当社管理部門・内部監査部門等による一層の関与

グループ各社は勤怠システムや給与システム、会計システム等を統一し、システム間のデータ受け渡しは当社管理部門が関与して自動化。

給与振込口座の登録は一人1口座。

グループ内の事務代行会社への委託を検討。

内部監査部門は、社員マスターファイルの保守管理の状況、給与データと会計データ、銀行振込データとの照合、事務の作業プロセスにおけるダブルチェック等牽制機能の有効性について監査を強化。


③ ルール・態勢の周知及び不正に関する社内への啓発

当社社長から全グループ会社にトップメッセージを再発信する等、不正を許さない当社の姿勢を明示し、コンプライアンスに関して全グループ会社の全階層に対し社内研修を定期的に実施。


④ 内部通報制度の活性化

通常のレポートラインで報告されない、子会社経営層の不適切行為に対処するため、
内部通報制度のさらなる活性化(規程類見直し、周知徹底)。

上位者であっても一切の不正は許されないという企業風土の醸成を徹底する。


⑤ 類似する業務内容のグループ会社統合の検討

同一の得意先の業務を主に行っているグループ会社や類似する業務内容のグループ会社については、コンプライアンスや指揮命令系統の強化のため、企業統合等を検討。

 

④の「上位者であっても一切の不正は許されないという企業風土」って表現が気になってしまいます。

 

なぜ不正が発見されなかった? 

今回の不正が発覚したきっかけは、該当の取締役が定年となるため、引き継ぎを行っている中で不審点が見つかったことです。 

こういった経理の不正が起こるのは、担当者が一人のパターンが圧倒的に多いです。(経理部の複数名が結託してというパターンは見たことがない) 

以前もマクドナルドのマネージャーが会社のお金を不正に使用したという事件もありましたが、あれも担当者が一人だからこそ起こった事件です。

 

不正が発覚するきっかけとして多いのが、税務調査と会計監査です。

この点について少し考えてみます。

まずは税務調査です。

不正に給与や賞与を水増ししていたので、会社の利益が少なく見えていたということになります。

こういった状況なら、国税や税務署の格好の的となるので、これが20年間発覚していないと考えると、恐らく税務上は調整していたのでしょう。

かなりざっくりと表現するなら、税金はきちんと支払っていただろうということです。(会計上は費用に計上したものを、税務上では費用として取り扱わないというのはよくあります)

 

次に会計監査です。

監査法人はあずさ監査法人となっています。

給与計算と、実際の給与の振込が違っていたということなので、比較的発覚しやすい手口だったと言えます。

それでもなぜ見つからなかったを考えると、恐らく株式会社レキストは規模が小さく、メインの監査外だった可能性があります。

上述のように、カンダHDには連結子会社が26社あります。

これだけ数が多いと、全ての子会社を四半期毎に監査するのは不可能なので、必然的に規模が大きい会社が重点的に監査されることになります。

カンダHDの有報を見ると、下記の3社が連結数字の中で、特に売上や利益が大きいとされています。

  • カンダコーポレーション株式会社
  • 株式会社ロジメディカル
  • 株式会社ペガサスグローバルエクスプレス

これ以外の情報でどうやって、規模が大きいかが外部から分かるかと言うと、資本金の額くらいとなります。

資本金が大きいほど、規模が大きい会社である可能性が高いです。

株式会社レキストは資本金の額で言えば、国内で3番目に大きい会社でした。

1位:ペガサスグローバルエクスプレスで3.3億円

2位:カンダコーポレーションで1億円

3位:レキストで8,800万円

4位:カンダコアテクノ、埼玉配送、カンダ物流で8,000万円

ただし、先程の売上が大きいロジメディカルは資本金3,000万円なので、あくまでも傾向に過ぎません。

つまり資本金が大きい=売上や利益が大きいは必ずつながるわけではないということです。

 

これだけ長期間見つからないと考えると、監査のメインからレキストが外れていたと思うのが自然でしょう。

 

オーナー会社の功罪

ここから不正が発覚しやすく、それが何度も起こってしまう要因について考えます。 

カンダHDで言えば、オーナー会社というのも要因の一つでしょう。

有報の大株主の状況を見ると、原島不動産という会社が36%以上を所有しています。

カンダ4

これは恐らく原島一族の資産会社なのでしょう。

社長と合わせて、全体の約40%の株を持っているということです。

いわゆるオーナー会社の典型です。(もちろん、ルールとしては何も問題はない)

 

さらに役員の状況で社長の経歴を見ると、

カンダ5

オーナー会社だからこその出世スピードです。

1990年に恐らく新卒で凸版印刷に入社し、5年後にカンダに入社、そこから4年後に取締役就任です。

普通の人なら31歳で取締役に就任なんて出来ません。

しかも、経理部長を務めていたというのが、何の因果なのかと思ってしまいます。(不正に目を光らせるポジションとも言える)

 

オーナー会社には良い点と悪い点どちらもあります。

良い点としては、トップが決めてそこに従うという意味で非常にスピーディーな意思決定が出来ます。

悪い点としては、組織の硬直化です。

トップが長年変わらないので、組織もトップに合わせて保守的なものになってしまうことが多いです。

社長が全てというマインドで溢れている職場だと、社長と合わない人には非常に辛いでしょう。

さらに、このような不正が発覚した場合でも、トップが辞任することはありません。

仮にトップが問題を起こしたとしても、自ら辞任することは少ないでしょう。

今回の不正を受けて、社長は役員報酬の3ヶ月分30%の減額を申し出てはいます。(仮に年間の報酬を2千万円とするなら、3ヶ月で約150万円の減額となります)

 

就職、転職するならどうする?

最後に、就職や転職する際にオーナー会社を選ぶべきかという話です。

日本の中小企業の99%以上はオーナー企業だそうです。

始めから、オーナー会社に出会う確率は非常に高いということは認めましょう。

しかし、オーナー会社とそうでない会社が選べるという状況なら、どちらがいいのかということです。

一つの判断基準は、その社長に一生ついていけるかと思えるかどうかではないでしょうか。

ついていきたいと思うなら、オーナー会社でもいいでしょうし、そうでないなら、民主的な会社を選ぶという選択もあるでしょう。

会社に入ってからでは、環境を変えることが難しくなってしまいます。

是非、一度だけ立ち止まってどちらがいいのかを考えて欲しいと思います。

 

まとめ

本日はカンダホールディングスの今年に入って二度目の不正について解説しました。

まとめると、下記です。

  • 1月にも子会社社長が不正な交際費申請をしていた
  • 今回は子会社の取締役が、給与や賞与を水増し振込を20年間して7.2億円着服
  • 一番の原因は一人でやっていたから
  • 税務では調整して、会計監査では規模が小さいから発覚しなかった可能性がある
  • オーナー会社だからこその硬直性には注意
  • 就職・転職の際には、社長に一生ついていけるかを、一つの判断材料としてもいいかも

不正の起きにくい仕組み作りが、少なくとも上場会社にはより一層求められるかなと思った経理マンでした。


従業員不正の防止と事後対応〔改訂版〕

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。