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【不正】ひらまつの調査報告書に驚き、創業者社長の闇

【不正】ひらまつの調査報告書に驚き、創業者社長の闇

【不正】ひらまつの調査報告書に驚き、創業者社長の闇

ひらまつの調査報告書と創業者社長の権力 

本日は高級フレンチを展開するひらまつの外部調査委員会による調査報告書を紹介します。

以前もひらまつは取り上げていますので、こちらも見て頂けるとより経緯が分かりやすいと思います。 

www.finance-accounting-value.com

10大ニュースでも一部、紹介しています。 

www.finance-accounting-value.com

ひらまつは創業者かつ元社長が、会社を訴えるというとんでもないことが起こった会社です。

そしてそこから、会社と創業者の会社間での取引について?マークとなり、調査委員会が設置されたという流れです。

やっぱり創業者社長って怖いと思わせる報告書でした。 

是非、最後までご覧下さい。

結論:ありえないガバナンス、これで上場会社?

これまでの経緯 

まずはこれまでの経緯を簡単に紹介します。

ひらまつは高級フレンチやホテルなどを運営する会社で、直近の決算は売上は100億円程度、当期純利益は20億円の赤字の東証一部の会社です。

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ひらまつ推移

その会社の創業者かつ社長だった平松博利氏(以下、平松氏)は2016年に社長を退任し、名目上は会社から離れました。

そして平松氏はひらまつ総合研究所(以下、ひらまつ総研)という会社を作り、その会社を通じて、ひらまつの新規店舗の出店などのコンサルティングを行っていました。

恐らく、その報酬が高すぎることもあり、関係を改善しようとひらまつが動いた結果、平松氏はひらまつという会社に訴訟を起こすという行動に出ました。

会社側も戦う姿勢を見せ、会社の言い分を見れば、平松氏が横暴な主張をしているように見えました。

そしてその中で、会社は平松氏のひらまつ総研に店舗を譲渡していたのですが、この譲渡の会計処理がどうだったのかという話になり、調査委員会が設置されたという流れです。

この調査が長引いたこともあり、2Qの決算が確定せず四半期報告書が提出出来ないという非常事態になっていました。

 

今回のリリース

そして今回の12月28日のリリースです。

リリースは2つで、もしも1月12日までに決算が提出出来ないとヤバいというものと、調査委員会の報告書です。

報告書ではないリリースから見ます。

リリース1

提出期限に間に合わないというリリースです。

リリース2

とある契約を取締役会の承認なく締結し、それを監査法人に隠して財務諸表を作成していたとしています。

ちなみにひらまつの担当は、EY新日本監査法人です。

リリース3

経営者による不正な財務報告があったとしています。

リリース4

財務諸表はある程度までは完成したが、注記という脚注のようなものが終了していないようです。

注記の修正をしているが、証憑が内部資料に過ぎないとの会計士の指摘があり、資料を集めているとのことです。

この期に及んで、資料を隠すということは考えにくいので、このように判断されるということは、十分な資料が社内にない?と思われます。

リリース5

ひらまつは整理銘柄(確認中)というイエローカード状態になり、1月12日までに四半期報告書が提出出来なければ、整理銘柄に指定された後、上場廃止となってしまいます。

 

報告書の内容

ここから今回のメインのテーマである調査報告書を紹介します。

調査は弁護士やトーマツの会計士など、外部の人物によって行われています。

58ページにも渡るものなので、気になる部分をピックアップします。

調査1

平松氏の会社は、個人経営でありほぼ平松氏が仕事をしていた。

調査2

2016年に平松氏から代表取締役に指名された後任の2名は平松氏に忖度し、ひらまつ総研の資金繰りを考えてコンサル報酬を決定、更にはそのような経緯を社外取締役には説明せず、妥当性をごまかしていた。

調査3

問題となったのは京都の2店舗で、赤字が続いていて減損のリスクがあったため、平松氏の会社に売却することとなった。(黒字化出来るならコンサルしてくれ)

調査4

とにかく平松氏の会社の資金繰りを考慮し、実態に見合う報酬を検討した形跡もない。

調査5

売却にあたり、平松氏から代金の2.8億円を減額要請された。

調査6

社外取締役は、契約については反対し、取締役会では店舗の売却の実行についてだけ承認された。

調査7

一時、平松氏の社長復帰も検討されたが、アドバンテッジアドバイザーズとの対立があり、実現せず。

その後、一部契約については解約が出来た。

調査8

ひらまつ総研に売却した店舗で、ひらまつの会社から出向という形で従業員を教育していた。

しかし、出向者の給与負担が嫌だったようで、その分の費用をひらまつに業務委託費として請求していた。

調査9

平松氏の妻もひらまつで取締役や執行役員として在籍。

調査10

ほとんどひらまつ総研や譲渡した店舗で働いていたが、平松氏はひらまつで雇用してほしいと要請し、会社側も特例で定年後も雇用を認めた。

調査11

賃金は月額で191万で年収2,300万ベース、平松氏の意向が反映されたとしている。

ひらまつ給与

ひらまつの従業員の平均給与は455万円で、役員は4名で5,300万なので一人あたり1,330万円。

それよりも高い給与なのだから、勤務実態があったにせよ流石に高すぎる。

役員給与

 

平松氏は自身の保有する200万株も会社に買い取るように要請。

関連当事者から外れたいらしいが、創業者は大株主でなくなっても外れることは出来ない。

調査12

それでも強引に覚書を締結。

調査13

全員が署名するまで帰さない空気感を作ってまで、買取の覚書は作ったが、詳細については詰めておらず。

調査14

最終的に委員会は、平松氏に異議や拒絶が出来なかったことが要因としています。

平松氏の退任は事業継承が目的だったが、あまりにもひらまつの経営に関与し過ぎた側面はあるでしょう。

調査15

さらにひらまつがひらまつ総研の総務や経理的な仕事もしており、独立した企業であることの意識が弱かったとしています。

 

結局はお金

とにかくこれが上場会社か!と言いたくなるほどのひどいガバナンスです。

調査書を読んで、驚きしかありませんでした。

しかも動機はお金が欲しいというだけです。

創業者で社長であったという立場を利用して、会社から離れたにも関わらず、会社から搾取を続けるという本当に恥ずかしい行いです。

それなら会社で社長のまま続ければ良かったのにとさえ思います。

中途半端に退任して、会社の利益を自分で新しく作った会社(ひらまつ総研)に移しているだけで何の意味もありません。

さらにこの調査委員会の調査にも費用がかかるわけで、外から見ると無駄にお金を使っているようにしか見えません。

ひらまつがひらまつ総研に支払ったコンサル費用だけの推移を見ると、下記です。

17/3月期:1.7億円

18/3月期:2.6億円

19/3月期:4.1億円

20/3月期:7.4億円

このように年々増加していたことが分かります。

利益が出ている状態ならばまだしも、20/3月期は20億円も赤字なので、赤字の原因を元社長が作っているとも言え、何をしているのかという印象です。

しかも平松氏は退任時には5億のボーナスを貰っていたわけで、どれだけお金に執着するのかと思いました。

 

もちろん、暴走を止めることが出来なかった取締役にも責任があるでしょう。

都合の悪い取引は隠していることから、自分達が良くないことをしている自覚はあったのでしょう。

以前も書きましたが、このような利益相反取引は税務上のリスクも非常に高いです。

税務調査が入っていれば、もっと早くバレていたかもしれません。

会社としては、訴訟になって公開出来たので良かったと安心した部分もあったでしょう。

これで年末の休みはなくなったのかもしれませんが、とにかく1月12日までの提出に神経を集中するしかありません。

経理担当者もヤバいと分かっていたのでは?というくらい元社長の理不尽な要求で、これで上場会社とは信じられないレベルです。

それだけ影響力があったことは分かりますが、会社の利益を考えればこんな取引を飲む方がおかしいですし、何年も続くことはなかったでしょう。

 

そんな会社の姿勢に対し、監査法人はどのような決断を下すか注目です。

監査というのはお互いの信頼関係が命です。

会社側が都合の悪い情報を隠すのは、監査法人として最も信頼出来ない行動です。

監査意見を出さないという選択肢もありそうです。

監査意見が出なければ即上場廃止ではありませんが、厳しい状況にあるのは確かです。

創業者の不正で、ステークホルダー・従業員にも迷惑がかかります。

4月にひらまつに入社する予定の新入社員は本当にやるせない気持ちなのでは?と思ってしまいます。

 

まとめ

本日はひらまつの調査報告書の内容を紹介しました。

まとめると、

  • 社長を退任した創業者から訴えられたのが高級フレンチなどを展開するひらまつ
  • そこから元社長との取引で、怪しい取引がバレてしまう
  • 外部調査委員会で、取締役会の承認を取っていない契約があり、しかも監査法人にも隠していたことが判明
  • 調査報告書ではとにかく元社長の圧力に負けたことが分かる
  • 元社長の動機はお金
  • 暴走を止められなかった取締役会のメンバーにも責任がある
  • 会計士がどう判断するかにも注目

ここまでひどい内容だとは思っていませんでした。

上場することの意味を理解していない経営者は交代すべきだし、どこで道を踏み外してしまったのか。

権力やお金に執着すると、本当に周りが見えなくなってしまうのだとつくづく思います。


日本企業のガバナンス改革 (日経文庫)

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。