まさかの意見不表明で、上場廃止もあり得る状況になるからには、相当ひどかったはず。
本日は、ハイアス・アンド・カンパニーに対して、監査法人が意見不表明という滅多に見れない怒りをぶつけたニュースを解説します。
そもそも意見不表明とは?という話から、どんな不正だったのか、さらには監査法人と会社の関係についても説明していきます。
非常に珍しい出来事なので、学べることがたくさんあります。
是非、最後までご覧下さい。
結論:あずさ監査法人がお怒り
ハイアス・アンド・カンパニーとは?
HPによれば、全国各地の工務店、建設会社、不動産仲介・管理会社など、住生活全般に関わる事業者を支援しているコンサルティング会社となっています。
従業員数は250名程度です。
直近の売上は約79億円、営業利益は約1億8,000万円です。
2020年の7月にマザーズから一部に市場変更したばかりでした。
その市場変更の際にも不正が絡んでいたようです。
監査意見の不表明とは?
監査意見を表明しないことは、この会社の財務諸表は信頼出来ませんと同義です。
つまり、上場会社としては監査法人に意見を表明してもらうことが当たり前ということです。
意見表明には、全部で4タイプ存在します。
無限定適正意見:◯のパターン、ほぼ全ての会社がこれ
限定付適正意見: 一部だけ不適切な事項はあるが、その影響はめちゃくちゃ大きくはないというパターン、これはほぼ✕に近い△というイメージで現在該当するのが5社というレアケース
不適正意見: 不適切な事項が発見され、これはほぼ信じられませんというパターン
意見不表明:完全に✕のパターンで、上場廃止コース
参考URL:東証の一覧です。
恐らくあずさ監査法人も、3回以上はハイアスに警告したと思われます。
これ以上隠すと、適正意見が出せませんよみたいなやり取りが何度も行われたことでしょう。
どんな不正だった?
ここから該当の不正について簡単に見ていきます。
2016年4月にマザーズに上場したハイアス・アンド・カンパニーですが、その上場前から売上計上を意図的に前にズラしていたものや、過大に計上したものがあったということです。
そして上場を早くしたいがために、予算を必達という空気が社内にあったようです。
例えるなら、部活動で地方大会で優勝するために、無茶をするようなものです。
そして売上計上を、本来よりも過大に計上することが何度もあったようです。(例:100万円の売上を150万円と偽るようなもの)
そういった取引は、実態のない契約による過大な売上計上だったとのことです。
そういった取引が2015年、2016年、2018年と続けて何度も発生します。
さらに費用についても、本来上げるべき金額よりも少なく計上し、利益がより出ているように見せかけていたようです。
ただし社外取締役は一つの取引に対し、疑念があり社長に確認したようですが、社長はこれを修正しようとはせず、該当の社外取締役もそれ以上の追求は出来なかったようです。
そして株主から不正に関する提訴請求書に対して、虚偽の説明を監査法人にしたとされています。(本来であれば、大問題だが、さも問題がないように見せかけた)
さらに監査法人に対して、メールの保管期限を無期限なのに5年と報告し、自らの都合の悪いメールを削除したとされています。
かなりざっくりとまとめると、上場を目的として利益を意図的に調整・粉飾しており、それを取締役や監査役が認識していたにも関わらず、誰も社長を止めなかったということです。
さらに監査法人に対しても、明確に不正を隠し通そうという意図があり、監査を妨害したとなるでしょう。
こういったことを鑑みて、意見不表明という重い決断をしたのでしょう。
そもそもクライアントを失う可能性が高い決定なので、普通ならあり得ない話なのです。
それほどに悪質だと判断したのでしょう。
これよりも詳しい報告については10月末までに、公開されるようです。
ちなみに代取を務めていた人物は9/30付で退任しています。
監査法人と会社の規模の関係性
ここから監査法人と会社の規模について書きます。
そもそも上場会社や上場を目指す会社は、監査法人をパートナーとして選ぶ必要があります。
上場している会社に限定するなら約3,700社というパイを、監査法人が争っているということです。
ビッグ4(トーマツ、新日本EY、KPMG=あずさ、PwC)と呼ばれる監査法人は大きいので、監査報酬が高くなります。
従って、基本的には会社の規模がそれほど大きくない場合は、ビッグ4以外の中堅や小さな監査法人が選ばれます。
もちろん、これから大きくなるんだという意気込みが会社にあって、ビッグ4と契約しているケースもあります。
ちなみにビッグ4のカバー率を調べてみると、ビッグ4が2,617社のクライアントを持っていることから、71%を占めています。
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ハイアス・アンド・カンパニーは比較的小さい規模と言えるので、あずさ監査法人というビッグ4と契約していたということに少し驚きました。
大きな監査法人ほど、監査は厳格と言えます。
2015年の東芝の不正の際には、担当していた新日本監査法人はかなり叩かれることとなりました。
もちろん、それには新日本が大手の監査法人だったこともあったでしょう。
一方で、やや訳アリの会社ばかりを監査している中小監査法人というのも存在し、駆け込み寺なんて呼ばれることもあります。
そういった意味で、あずさ監査法人に対してこんな不正をやっていれば、早々に発覚するのは確実だったと言えるでしょう。(中小監査法人だったらバレなかったという意味ではありません)
監査法人が交代するケース
ここから監査法人が交代するケースについて考えてみましょう。
主に4パターンあります。(例で出している監査法人に他意はありません)
①大手から大手へ変更(例:トーマツ→あずさ)
これは問題のないパターンです。
主な交代理由としては、監査年数の長期化です。
会社によっては50年も同じ監査法人ということがあって、そういった場合には監査法人を交代を検討するということがあります。
もちろん、監査法人のパートナーと呼ばれる偉い人は一定の年数で交代しますが、トーマツという監査法人によって監査されることは続きます。
私も経理時代には、監査法人の先生と飲んだりしたことがありました。
あまりにも長い期間同じ監査法人の監査を受けていると、少し距離が近すぎるということでしょう。
ただし、経理マンからすれば、交代されると最初からなので面倒ですが。
②大手から中小へ変更(例:トーマツ→アーク)
これはちょっと気になるパターンです。
会社の規模が大きいのに、ビッグ4などから中小監査法人に変更するのには訳がありそうです。
しかも、それが駆け込み寺と呼ばれるちょっと危ない監査法人なら尚更です。
もちろん、問題のないケースも多いでしょうが、やや注意というところでしょう。
③中小から大手へジャンプアップ(例:三優→新日本)
これは基本的には喜ばしい例でしょう。
会社の規模の拡大に伴い、監査法人も大きいところにするという例です。
大手の監査法人の方がより厳格な監査をすると言えるので、将来的にはビッグ4に監査してもらいたい会社の方が多いでしょう。
④中小から中小へ変更(例:ひびき→アヴァンティア)
これも少し注意が必要です。
中小から中小に変更するメリットはほとんどありません。
監査年数が長いから交代であれば、大きい監査法人にすればいいでしょうし、交代には色々な面倒な部分もあります。
危ない会社が監査法人がある会計処理を認めてくれないので、交代するというパターンと考えることもできます。
こんな感じで、異動のリリースはされます。
まとめ
本日はハイアス・アンド・カンパニーの不正にあずさ監査法人が意見不表明を出したニュースを解説しました。
まとめると、
- 上場前から利益などの調整を行い、さらに隠蔽しようとした
- ビッグ4なら見逃してくれるはずもなく、意見不表明という重い判断をした
- 会社の規模が小さいなら、ビッグ4以外の監査法人と契約することが多い
- 監査法人の交代にはネガティブな理由があることもある
超勝手な経理マンのビッグ4のイメージ
トーマツ:体育会系
EY新日本:真面目で細かい
KPMGあずさ:要領の良いタイプ
PwC:人のPwC、人情味がある?(コンサルではパワハラもあったけど)
監査法人も大変だなぁと思いました。
※後日談として社長が交代のリリースを取り上げました。
www.finance-accounting-value.com
動画版はこちら
ここまでお読みいただきありがとうございました。