面倒くさいけど、監査的に重要なのが残確
本日は経理や監査における「残高確認」について紹介します。
私も経理になって、初めて知った言葉で、馴染みのないフレーズですが、知っておけば「お?残高確認知ってるんだ」となること間違いなしです。
回答をお願いする側、お願いされる側どちらにもなりえます。
是非、最後まで見て残高確認とは何かをバッチリ理解しましょう。
(※ICOCAなどの残高の確認とか、そういう話ではありませんのでご注意下さい)
結論:残高確認は不正を見つけるため、重要な手続き
残高確認とは?
今回は、売掛金の残高確認を中心に話します。
他には、外部倉庫などに保管している在庫の残高の確認や、銀行などの預金の残高確認、という意味などでも使われる言葉です。
しかし、残高確認と言えば、まずは売掛金というイメージです。
残高確認や残高確認状を略して、「残確(ざんかく)」と言うことが多いです。
私も経理になって、ざんかく?となったのを覚えています。
残高確認を出すパターンは2つあります。
1つ目は、会社の要望で取引先に回答をお願いするパターンです。
2つ目が、会社を監査している監査法人主導で、残高確認をするパターンです。
上場会社であれば、年に1回は残高確認をするケースが多いでしょう。
非上場会社であっても、会社の判断でやっているケースもあるので、どんな会社の人でも知っておいて損はないというわけです。
会社の残高確認・会計士の残高確認どちらも経験した経理マンが考えるに、どちらがより面倒かと言うと、監査法人(会計士)の残高確認です。
具体的にどういうことをするかというと、自社の売上先がいくつかあり、その中から調査をする会社を選びます。
そしてこの売上というのは売掛金という、いずれ入金されるであろう金額と結びついています。
それならば、相手の会社は買掛金や未払費用という形で、払うべきものとして同額が認識されているはずです。
例えば、自社は取引先に対して110万円の売掛金で認識していて、相手先の自社に対する買掛金も110万円になっていればOKです。
この自社の売掛金と相手先の買掛金などが一致していることを、確かめる手続きが残高確認と呼ばれます。
監査法人から依頼するパターンなら、取引先の回答結果は監査法人に送ってもらうことになります。
全ての取引先に依頼すると、莫大な量となってしまうので、金額の大きいところがピックアップされやすいです。
しかし、金額が大きいほど、差異が発生する可能性が高くなってしまいます。
差異があったら?
両者は一致しているはずなのですが、差異があることもあります。
自社の売上計上のタイミングと、取引先の仕入計上のタイミングが異なることもあります。
また消費税によって、3円ズレているなどもあります。
差異がある場合は、理由や明細をつけてねと依頼することがあり、その明細などで確認をします。
つまり、きちんとした理由があるなら、差異があっても問題はないということです。
国内、海外の違い
回答する側には、正直メリットはありません。
あくまでも依頼に過ぎないので、答える義務はないのです。
日本は3月決算の上場会社が多いので、4月中旬に色んな会社の残高確認が届くケースがあります。
回収する側としては、返送がなければ、とにかく催促するしかありません。(特に監査法人の依頼の場合は、回収出来るまで何度も催促することがあります。)
ルートとしては、下記のように長くなってしまうことがあります。
(監査法人→)自社経理→自社の営業→取引先の営業→取引先の経理
営業の方を挟んでいるので、余計に時間がかかる可能性があります。
同じ国内でも時間がかかる場合が多いですが、海外だとそれがより深刻です。
逆に海外からも取引があれば残高確認と言って、確認状が相手からメールなどで届く場合があります。(バランスコンファメーション(Balance Confirmation)などと呼ばれます)
海外から残高確認を回収しないといけないとなると、その苦労が増えます。
そもそも、入金ですら期日通りにならないことが多いのですから、残高確認なんて中々回答してくれません。
しつこくメールを送って、なんとか入手出来たというパターンも多いでしょう。
残確から不正の発覚も
なぜ残確をするのか?と言うと不正を発見するという目的もあります。
架空の売上計上をするなら、架空の売上と架空の売掛金がセットで出来てしまいます。(もちろん、掛けにしないとダメ)
その架空の売掛金はずっと回収がされないままです。
そういった不正が残確から発覚するのです。
相手先と共謀していなければ、自社は1億円の売掛金があるのに、相手先からこんな買掛金はありませんと回答が来てしまい、一発で監査法人にバレてしまいます。
もちろん、共謀することは共犯なので、やりたがる会社はないでしょう。
昔、何かで見た面白いケースは、監査法人が依頼する残高確認で、とあるポストに自社の残高確認が入ったのを見た経理マンがいたそうです。
そしてその経理マンは郵便局に連絡し、間違えてポストに入れてしまったと説明し、ポストからその残高確認をこっそり入手しました。
その残高確認を発送されると、不正がバレるということでそんな行動をしたようです。
しかし、残高確認にはその会社の角印を押してねというパターンが多く、回答を偽造することが難しいのです。
回答の偽造という意味では、電子化という論点もあります。
電子化
そんな残確の世界にも、電子化の流れが来ています。
監査法人のビッグ4(トーマツ、EY新日本、KPMGあずさ、PwC)が協力して、残高確認の電子化を目指しているようです。
従来の紙の郵送であれば、郵送によるタイムラグ・郵送費や、押印などの手間などが課題としてあります。
それが解決されるということで、電子化が進もうとしているという面があります。
具体的には共通のプラットフォームで自社が依頼し、相手先が回答するという試みのようです。
それを監査法人側が確認すれば、様々なムダが削減できるというわけです。
紙の請求書を電子化したら、1兆円削減なんて話もありました。
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まとめ
本日は経理や監査における、残高確認について基本的な事項を紹介しました。
まとめると、
- 残高確認とは監査上の手続きである
- 金額の大きいところが選ばれやすい
- 自社の売掛金と相手先の買掛金などは一致するはず
- きちんと理由があれば、差異があってもOK
- あくまでもお願い、海外なら回答がより遅い
- これがきっかけで、不正が発覚することもあるので重要
- 残確の電子化も進もうとしている
けっこう無駄が多いように感じられるのが、残高確認です。
しかし、監査法人としては重要な位置づけなので、経理とのギャップが大きい論点とも言えそうです。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。