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【上場会社倒産】株式会社Nutsはなぜ破産したのか?そんなことが起こる遠因とは?【YouTube動画あり】

【上場会社倒産】株式会社Nutsはなぜ破産したのか?そんなことが起こる遠因とは?

【上場会社倒産】株式会社Nutsはなぜ破産したのか?そんなことが起こる遠因とは?

今年になって2社目の、上場会社の倒産となったNutsを少しだけ調べてみます。

レナウンに続き、上場会社の倒産のニュースが入ってきました。

news.yahoo.co.jp

インターネットでも色々と言われていますが、この記事では世間ではあまり語られていない側面から遠因についても考えてみます。

ヒントは最強のビジネスモデルです。

結論:当たり前が出来ていない会社と、それを生み出すのは東証

株式会社Nuts 

まずは株式会社Nutsがどんな会社だったかを確認します。

設立は意外に古く1977年。(元々は塩化ビニール製品の販売を目的)

資本金は43億円、直近の本決算の売上は1.2億円(2019年3月期)で当期純利益は約10億円の赤字です。

ちなみに、本来であれば2020年3月期が確定しているはずなのですが、後述の理由で開示できないまま破産となりました。

 

とにかく事業がコロコロと変わる会社で、下記のような変遷です。

  • 塩化ビニール
  • ビデオソフト
  • ゲームソフト
  • インターネットカフェ
  • メダルゲーム機
  • 医療関連

いつまでHPがあるのか分かりませんが、HPの有報から確認しています。

www.too-nuts.co.jp

なぜ倒産するのか?

倒産(破産)理由は、9月16日に下記のタイトルで開示されています。

破産手続開始の申立て及び破産手続開始決定に関するお知らせ

 

破産申し立てをしたのは、取締役の森田浩章氏です。

この森田氏は代取を務めていましたが、2020年3月に取締役に異動しています。

この申し立ての経緯と理由は下記です。

 

①2016 年 3 月期以降 4 期連続して経常損失および当期純損失を計上していた。

 

②2020 年 2 月 26 日に証券取引等監視委員会が当社に対し金融商品取引法違反(偽計)の嫌疑で強制調査に入った。

これを受けて、同月 12 日に外部調査委員会を設置した。

 

③2020 年 4 月 3 日、当社の監査人であった監査法人元和が 2020 年 3 月期の財務諸表監査をしていた過程で、現金が帳簿上は 809百万円であるのに実際には 50 万円しかない事実が発覚した。

これをきっかけにして、同年 4 月 24 日、当社と監査法人元和との監査契約が合意解除され、監査法人元和は監査人を退任した。

外部調査委員会の調査範囲を偽計事案のみならず現金差異やこれと会員権売上高との関係(会員制医療施設の入会申込者の実在性)の点にも拡げることにした。


④その後、当社は、2020 年 8 月 13 日、一時会計監査人として監査法人アリアを選任した。

外部調査委員会の調査結果を受けて、当社の決算を確定し、同監査法人による監査を受けて 2020 年 9 月末日までに 2020 年 3 月期の有価証券報告書を提出し、その後速やかに定時株主総会を開催して当社の再建を図る所存だった。

しかし、当社は、上記の現金差異のとおり現預金が枯渇しており、新たな資金の調達を
行うこともできず、一時会計監査人との監査契約において必要とされる監査報酬の一部を支払うことができなかったため、2020 年 9 月 7 日に監査法人アリアより解除の通知を受けることとなった。

 

⑥そして有価証券報告書の提出期限である令和2 年 9 月末日までに有価証券報告書を提出することができない見通しとなるとともに、当社の上場維持および今後の事業の継続の見通しも立たない状況となった。

 

まとめると、証券取引等監視委員会の強制捜査があった。

現金が帳簿と現物でかなり大きな差異が出た。

これをきっかけに、監査法人が退任してしまった。

そして、新しい監査法人と契約をし、9月末までの有報提出を目指していたが、資金繰りが上手く行かず、監査報酬が一部支払えずに契約解除。

よって9月末までの有報提出が出来ず、上場の維持と事業継続が無理と判断。

 

監査報酬が払えなかったとされていますが、監査報酬は会社の規模によって増減します。

トヨタ自動車なら約17億円、 小さい会社なら1,600万円というケースもあります。

仮に2,000万円としてその一部が払えないのなら、とにかく現預金がなかったということでしょう。

 

消えた8億円事件 

この中で一番大きいと思われるのは、現金監査で大きな差異があったということです。

分かりやすくするために、家計簿で例えます。

あなたは、家計簿をきちんとつけて月末の残金が80万円でした。

しかし、実際に数えてみると5千円しかありませんでしたということです。

とにかくあり得ない差額です。

 

まずは現金と預金の違いをサラッと説明します。

現金とは、会社の金庫などに保管しておく、小口現金を指します。

一方、預金とはその名の通り、銀行に預けているお金です。

例えば、小口現金が多ければ、銀行に預ければいいし、現金が少なくなれば銀行から引き出すということです。

そもそも現金が8億円もあれば、預金に預けようとなったはずです。

なぜなら、それだけの大金を現金として会社に保有しておくのは、リスクが高いからです。

 

そして監査法人の現金監査について簡単に説明します。

現金監査は、監査上のかなり重要な項目です。

一つには、現金は現物があるので、それが絶対的な正解になるからです。

私も経理マンとして経験しましたが、会計士の先生が全て数えていきます。(慣れていない先生なら、手付きがおぼつかないこともある)

在庫であれば、数量と単価があって財務諸表の在庫金額となります。

在庫としてはあるけど、価値はありませんという商品も存在することもあります。

しかし現金は数えた金額がそのままBSに記載されるわけです。(預金と合算され現預金として表示されることもあり)

これは会計士の監査であれば、毎期末必ずチェックされます。

今回のNutsのケースなら、期末時点の3月31日時点の現金を4月3日に確認したということです。

つまり抜き打ちでも何でもありません

事前に数えておけば、50万円ちょっとしかないことは明白だったはずです。

 

それにも関わらず、なぜ帳簿を修正しなかったのかということです。

そして預金の監査も同様に重要な項目で、銀行に対し残高確認をして、銀行から預金の金額を残高証明書で報告してもらうことになっています。

こちらもその残高証明書が正解なので、それに合っているか帳簿を確認します。

つまり、これもごまかそうとしても無駄ということです。

現金でダメなら、預金を調整しようとしてもバレます。

 

ここから考えられるのは、そもそもその8億円は存在しなかったということです。

もしも現金で受け取ったというなら、銀行に預けるべきだったし、現物と帳簿が合っていない時点で何らかの処理が必要でした。

Nutsは上場して間もない会社でもなく、現金監査が合わずに監査法人から指摘を受けるだろうと理解していたはずです。

それでも修正しなかったのは、修正出来なかったと考えるのが自然でしょう。

 

自分達が悪いことをやっている自覚はあって、それでもやったという意味では、もはや救いようはないのかもしれません。

破産した理由はたくさんあるのでしょうが、コンプライアンス意識の低さや、会計・経理に対する意識がズレていたということになります。

 

なぜこんな会社が上場を維持できるのか?

どうして、こんな会社を上場したままにしておくのかという疑問が湧くかもしれません。

これを考える際に重要なのが、東証の存在です。

東証とは東京証券取引所の略で、上場している会社を束ねる存在です。

そしてこれから上場する会社を、審査する会社でもあります。

上場するためには、東証の審査を受け合格した会社である必要があります。

近年の1年当りの新規上場会社数は、90社前後です。

当然ながら、上場したいと手を上げた会社が全て上場出来るわけではなく、審査を受けて上場が出来ない場合もあります。(200社申請をして90社合格みたいなイメージ、再挑戦も可能)

つまり、最初から一定のスクリーニング(選別)がされていて、体制に不備がある会社は上場出来ないようになっているのです。

 

それでも上場してから、間違った道に進んでしまう会社もあるでしょう。

そういった会社に対して、東証が注意や勧告をすることはあります。

しかし、上場している会社を上場廃止にするという命令を、実際に下すことは稀です。

もちろん、株式の併合などで上場廃止となる銘柄はそれなりに存在はしています。

大事なのは、東証の意思で、上場している会社にNoを突きつけるかという点です。

 

ここが一番のポイントで、なぜそんなことをしないのかは、東証は上場会社から上場維持手数料を受け取るからです。

これが年間上場料と呼ばれる東証の売上なのです。

東証は株式会社日本取引所グループの子会社で、日本取引所グループも上場しており、業績も開示されています。

直近の決算の売上が約1,200億円で、当期純利益は480億円です。

この内、143億円の売上が上場関連収益で、新規・追加で40億円、年間上場料として103億円を稼いでいるのです。

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東証有報

ちなみに、売上の最大の柱は、現物株式やデリバティブの売買に伴う手数料などで486億円となっています。

 

年間上場料とは、上場しているだけで毎年支払う必要がある費用です。

これはランニングコスト(ずっと払い続ける)なのです。

この金額は時価総額が大きい会社ほど、多く支払うというシステムになっています。(最大で年間456万円)

さらに新規上場する時にも、上場審査料(400万)と新規上場料(東証一部なら1,500万円)が必要です。

 

つまり、東証にとって上場会社は大切なお客様なのです。

どれだけ問題を起こした会社でも、廃止に追い込めば年間上場料という売上がなくなるということなのです。

だからこそ、悪い上場会社というのも抜け道を探してしまうという側面もあるかもしれません。

 

もちろん、東証のシステムを否定するつもりはありません。

最初に述べたように、上場している会社からお金を毎年貰えるというのは、他の会社にはほぼ出来ない最強のビジネスモデルです。(真似が出来るのは、海外の取引所くらいだが、上場に関わる制約も多く現実的なライバルではない)

 

この裏側まで知っておくと、今後の上場会社の不正だったり、コンプライアンス違反があった時に便利でしょう。

東証も上場会社に支えてもらっているからこそ、不正をした会社にあまりにもひどい仕打ちは出来ないのです。(もちろん、動くべき時に動かないとレピュテーションリスクがある)


V字回復の経営 2年で会社を変えられますか 企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

 

動画版はこちらです。

youtu.be

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。