意外と知らない、計画や予算を作る意味について解説します。
本日は主に営業の方など、経理以外の部門の方向けに計画(予算)を作る意味について経理マンの視点で解説します。
この論点は主に上場企業や上場会社の子会社などで働かれる方に有益ですが、そうでない方でももちろん知っておいて損はないポイントです。
私が社会人になって経理に配属されて驚いたのは、計画を上期・下期で分けて、下期に入る前に必ず計画を修正するという点です。
これは「上期が悪いから下期で帳尻を合わせる」という意味で修正するのではなく、ルーティーンとして下期を毎年見直すということです。
何故こんなことをわざわざするのか?皆さんはこの意味が分かるでしょうか。
ポイントとなるのは上場しているかどうかです。
これだけ聞いて「ははーん」とひらめいた方は、すごいです。
そうでない方は、是非、最後まで見て予算の意味を理解しましょう。
結論:まずは計画や予算の意味から、責任が伴うのがポイント
予算・計画とは何か?
そもそも予算または計画とは何?というところからスタートです。
計画は、予算とか目標とも言い換えることが出来ます。
つまり、未来の時点の何らかの数値目標です。
目標がなければ、人は頑張ることが難しく、それが明確ならどうやって達成するかを考えることが出来ます。
例えば、前期の売上が100億円で営業利益が10億円の会社だったら、今期は売上120億円、営業利益は12億円という目標を持つわけです。
そしてそれが、事業部毎にブレークダウンされるのが普通です。
会社全体の目標と、事業部の目標があり、それを達成することが大事ということです。
予算はどうやって作る?
では、その予算はどうやって作成するのでしょうか。
トップダウンで絶対にこれを達成しろ!というパターンと、各事業部が作りそれを積み上げるボトムアップ型の2つがあります。
どちらが優れているという議論は置いておいて、ここで大事なのが営業(事業部)からすると保守的に作りたいという欲求があるという点です。
保守的とは、普通に行けば売上は110億円くらいだけど、達成出来なかったら嫌だから105億円を予算にするような考え方です。
この考えの逆が、120億円に挑戦という強気計画です。
保守的(弱気)に作っておけば、後から実はもっと数字が良かったです!となれば嬉しいというメリットもあると考えたくなるでしょう。
しかし、ここで大事なのが上場しているということです。
上場しているなら予想がめっちゃ大事
上場している会社は期初などに通期(1年)の予想を出します。
1年間で売上はこれだけ、利益はこれだけと先に宣言するのです。
その予想と乖離があった場合には、それが上だろうが下だろうがどちらでも予想の修正が必要となるということです。
これが本日の一番大切なポイントです。
以前の鬼滅の刃でも似たような話をしていますので、こちらも見て頂けるとより理解が深まり、業績予想に詳しくなれるはずです。
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上場企業の実例を紹介します。
これはミロク情報サービスという会社のリリースです。
5月13日に公表した予想を10月30日に修正しています。
これを見て分かるように売上は減ったけど、利益は増えましたという少し珍しいパターンです。
投資家からすれば、利益増なので嬉しいリリースと言えるでしょう。
予想と少しでも違っていれば、修正を出さないといけないの?と思われる方もいるかもしれません。
修正には基準となるパーセントがあります。
それが売上高なら30%以上の増減。
利益関係の営業利益・経常利益・当期純利益なら10%以上の増減です。
売上高だけ基準が大きいことが特徴です。
この基準に照らし合わせてみると、確かにミロク情報サービスは利益の部分で基準を超えているので、リリースを出したことが分かります。
ちなみにこの基準を超えていなくても、自主的に企業側が業績予想の修正リリースをすることもあり得ますので、この点は覚えておきましょう。
業績予想の修正は出来れば出したくない
さて、ルールについて理解して頂いたところで、経理の心理から考えましょう。
業績予想を修正するのは、やりたくないというのが大前提です。
例えば、下方修正という強気に計画を作ったけど、実はダメでしたパターンが投資家などから嫌がられるのは自明でしょう。
一方、その逆の上方修正ならいいのではと思う方もいるでしょう。
しかし、この上方修正も望ましくはありません。
何年かに一回出る上方修正ならいいのですが、毎年上方修正している会社があるなら、予想の精度が低すぎると考えられてしまいます。
つまり、最初から超弱気に作って、実は好調でした!を繰り返してはオオカミ少年と一緒というわけです。
私が経理として働いていた時には、強気はほとんどなく、保守的に計画を作ってしまう人が多かった印象です。
その数値の根拠を聞くと、なんと「これは予備費」みたいな言い方をする方さえいました。
これは本当は300万しか費用が発生しないはずなのに、400万円を予算として取っておくという考え方です。
感覚としては理解出来ます。
もしかすると多く発生してしまうかもしれないから、こういう予備で余分に取っておきたくなる気持ちでしょう。
しかし、あくまでも発生確率で考えてほしいというのが経理の気持ちです。
その費用が発生する確率が高いなら、その項目としてその費用を正確に予算化しておかないと、予算と実績との比較も無意味になってしまいます。
さらに、今まで述べてきたように業績予想の修正が必要となる可能性もあります。
修正は上でも下でも当初の予想と乖離が発生した時点で、必要となってしまいます。
ということで業績予想の修正は出したくないので、計画は慎重に作って欲しい。
かつ、保守的に作ればいいという話でもないというのがポイントです。
修正を出すかを確認するために見込みが必要
最後に見込みの話をします。
修正のリリースとはこうなりそうという見込みに基づいて、話が進められます。
だから、上場会社で働いているならしょっちゅう見込みを出す必要があるのです。
例えば、12月の始めには、事業部の方は1月・2月・3月の売上や利益がどうなりそうかを経理などに報告が求められたりします。
この見込みの精度も、計画同様に大事です。
つまり、ここでも保守的に見込みを出しても意味がないということです。
またその見込みは、一定の信頼性が必要です。
あまりにもエイヤ!過ぎてもいけないということです。(適当に決めちゃダメだよということ)
とは言え、その精度が高い見込みってどうやって判断するの?という問題もあるにはあります。
営業側と経理だったら、営業側に売上につながる情報がたくさんあります。
例えば受注見込みが2割くらいの案件を見込みの売上としてカウントするのかなど、経理側にはその見込みの精度が高いかをバシッと判断は出来ないのです。
しかし、いづれにせよ、計画や予算を作る意味を理解していない人が多いのではないかというのが私の主張です。
これを知っておけば、いかに計画や見込みが重要性を持っているかが理解して頂けたのではないでしょうか。
まとめ
本日は計画や予算を作る意味とはという話をしました。
まとめると、
- 計画や予算は、未来の数値目標
- 計画の作り方はトップダウンとボトムアップがある
- 強気で作るか弱気で作るか
- 上場会社なら、当初の予想と乖離があれば修正リリースが必要
- 保守的に作りたくなるのが人間の心理
- 計画とは別に、見込みの作成も必要となることがある
- 見込みも保守的ではNG
- しかし経理側も、それが精度の高い見込みかを判断するのは難しい
- まずは計画を作る意味を知っておくべし
やはりその意味を知らずに業務をしてしまうと、効率や生産性が落ちてしまうと思います。
予算や計画が全くないという会社は珍しいでしょうから、是非、今回紹介したポイントを理解して頂くと、会社の業務がまた違って見えるはずです。
これから社会人になる方も最初からこの知識を持っておけば、間違いなくスタートダッシュしやすくなります。
動画版はこちら
ここまでお読みいただきありがとうございました。