知ってみるとめっちゃシンプルなアクルーアルを紹介します。
先日、本屋さんで会計関係の本を読んでいました。
そこで初めて見た言葉が「アクルーアル」です。
私は経理マンを8年間やってきましたが、この言葉の意味を知りませんでした。
YouTubeで検索してみると、確かに日本語で解説している動画がありません。
ということでアクルーアルを紹介します。
アクルーアルの特徴は粉飾決算を見抜く指標として優れているようです。
結論:アクルーアルは企業の現金と利益で決まる
アクルーアルの計算式
アクルーアル(Accrual)とは会計発生高という意味のようです。
これだけ聞いても、何のことやらですが、計算式しては非常にシンプルです。
企業の成績である「PLの当期純利益(税引き後利益)-営業キャッシュフロー=アクルーアル」 です。
営業キャッシュフローって何となるかもしれませんが、後ほど説明しますのでご安心下さい。
トヨタ自動車の実例で解説します。(直近の本決算2020年3月期を使用)
決算短信の表紙から計算が可能です。
当期純利益は赤字の数値で、2,076,183百万(=約2.1兆円)
短信の中にあるPLを見てももちろんOKです。
営業キャッシュフローも短信の表紙にあります。
トヨタの営業キャッシュフローは3,590,643百万(=約3.6兆円)
キャッシュフロー計算書から確認してもOK。
トヨタのアクルーアルを計算すると、
アクルーアル=当期純利益(2,076,183)-営業キャッシュフロー(3,590,643)=-1,514,460百万円
つまり△約1.5兆円となります。
アクルーアルの意味
これが何を意味しているかを説明します。
まず当期純利益とは、税金も考慮した後の企業の最終的な利益となります。
一方で営業キャッシュフローとは、会社の営業活動で稼いだお金となります。
利益が黒字だったとしても、営業キャッシュフローはマイナスになることがあります。
これはPLは好調そうに見えても、現金が減っているということです。
言い換えると、企業の利益というのは、現金の残高の動きと必ず同じ動きをするわけではないということです。
つまり4パターンあることになります。
- 利益が増えて、現金も増える
- 利益が増えて、現金が減る
- 利益が減って、現金が増える
- 利益が減って、現金も減る
粉飾決算でイメージすると分かりやすいと思います。
10億円の架空の売上を作ります。
会計(PL)上は、利益が10億円プラスされます。
しかし、現金としては、架空なのでいつまで経っても入金されず、残高がプラスにはなりません。(上記の2のパターン)
会社が潰れないためには現金(預金)が必須です。
現預金があれば、事業活動を継続出来るのです。
つまり大事なのは、利益よりも現金です。
※ちなみに現金の動きを見るキャッシュフロー計算書は、第2四半期と本決算の時しか公開されない可能性が高いです。
じゃあどちらが良い?
そうなれば、アクルーアルとは「利益-営業で稼いだお金」で計算されるので、 アクルーアルは小さい方がいいということになります。(マイナスが望ましい)
トヨタの場合も、マイナスになっており、利益よりも現金の増加が大きいということで、この決算によってさらに安定性が増したと言えるでしょう。
同じ業種として、日産自動車を計算してみようと思ったら、とあることに気が付きました。
それは当期純利益が赤字なら、あまりアクルーアル計算の意味がないということです。
日産自動車の直近の本決算の数値は、当期純利益が△671,216百万円で、約7,000億円の赤字です。
営業キャッシュフローは、+1,185,854百万円です。
従って、アクルーアルは-671,216-1,185,584=-1,856,800(△約1.9兆円)となります。
なんとトヨタ自動車(△1.5兆円)よりもアクルーアルが良くなってしまいます。
先程の4パターンで考えましょう。
- 利益が+、営業CF+=純粋なアクルーアルの計算(これで△なら良い会社)→トヨタ自動車の例
- 利益が+、営業CF△=+(必ずアクルーアルがプラス)→ヤバい会社の典型
- 利益が△、営業CF+=△(必ずアクルーアルが△)→日産自動車の例、利益マイナスで営業CFプラスなら一定の評価は出来る
- 利益が△、営業CF△=恐らく計算する意味がないパターン→レオパレス21がそう
粉飾決算の指標としても有効なのは、2のパターンです。
つまり利益が出ているが、営業キャッシュフローはマイナスになっているということで、企業の血液とも言える現金が減って危険信号ということです。
さらに1のパターンでも、アクルーアルがプラスになっている会社は少し注意が必要ということです。(利益よりも、営業活動での現金の獲得が少ないと言えるから)
企業にとって現金が大事なので、アクルーアルはマイナスの方が優秀というわけです。
ただし、現金を溜め込めばいいかというと、もちろんそうではなく、使うべきタイミングで投資が出来ないなら、会社が衰退していく可能性が高いです。
アクルーアル比率
もう一つアクルーアルで知っておきたいのは、 アクルーアル比率です。
これはアクルーアルを総資産で割るというシンプルな計算です。
トヨタ自動車で考えましょう。
トヨタの総資産は52,680,436百万円(約53兆円)なので、
アクルーアル比率は
-1,856,800÷52,680,436=△3.5%となります。
この比率はマイナスであるほど、良いとなります。
例えば、総資産が仮に半分の26兆円なら△7.0%となり、より小さい資産でアクルーアルを生み出しているとなります。(ただし、アクルーアルはマイナスが良い点にだけ注意)
つまり効率の良い経営をしているのは、アクルーアル比率が小さい(マイナスの値としては大きい)となります。
ROEやROAなども同様で、少ない資産や自己資本で大きな利益が稼ぐ会社が「コスパのいい経営をしている」となるわけです。
アクルーアル比率は、企業の現金に目をつけた点というのが、優れているポイントとも言えそうです。
まとめ
本日はアクルーアルを知らなかった経理マンが、アクルーアルと関連指標を解説しました。
まとめると、
- アクルーアルとは当期純利益-営業キャッシュフローで計算する
- アクルーアルはマイナスが望ましい
- アクルーアルがプラスなら、現金の残高に注意
- 粉飾決算の会社もプラスになりやすい
- アクルーアル比率も合わせて見ると、企業の効率性を見ることが出来る
経理マンなら知っていて当たり前なのかもしれませんが、私はアクルーアルを初めて知って勉強になりました。
知らないことを知っているという無知の知とよく言われますが、まさにそれを実感した週末でした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。