感情で見るなら、ワタミがブラックに逆戻りと考えたくなる話です。
本日はワタミという会社がブラックなのかホワイトなのかという話をします。
ブラック企業として有名だったワタミが、ホワイト企業になったと思ったら、再び労働時間の問題が発生。
しかし、実はこの問題は、パワハラ所長からの訴えでその中身は違うのではという記事が出ていました。
確かにブラック企業だったワタミがホワイト企業にはなれず、実はブラックのままというストーリーはしっくり来るものでした。(私もそうなんだろうなと印象で思い込んでいました。)
しかし、実際は真逆だったという記事となります。
当然、ワタミ側に責任があったことは明らかで、この記事とワタミの対応について経理マンの視点で見てみます。
結論:もちろん、双方の意見があって然るべき、しかしワタミの姿勢も疑問
ワタミとはどんな会社?
まずはワタミという会社から紹介。
外食産業からスタートし、宅食や、電力事業、農業まで行う会社です。
設立は、1984年渡邉美樹氏で、2011年5月に一度非常勤となるも、2019年9月より再度代表取締役会長兼CEOに就任。
この渡邉氏の影響力が非常に強い会社と言っていいでしょう。
大株主の状況を見てもそれが分かります。
筆頭株主の有限会社アレーテーとは、渡邉氏の会社であり、27%という非常に強い支配権を持っています。
2位にはサントリー酒類が11%、3位にはアサヒビールと続いています。
業績について見てみます。
5年間の推移がこちらです。
直近の本決算の数値は売上が910億円、当期純利益は30億円の赤字となっています。
5年間平均で見ると、売上は1,020億円、当期純利益は9.2億円の黒字です。
売上は少しずつ減少しており、5年前の78億円という利益のピークがあって、利益も悪戦苦闘というあまりいいものではありません。
直近の決算は第1Q決算が8月の中旬に公開されています。(来週には2Q決算が出るスケジュール)
売上は127億と前期比で44%の減少、当期純利益は46億円の赤字と苦しいものになっています。
通期での予想は今の所、公開されていません。
ワタミと言えば居酒屋の和民で有名でしたが、セグメントで見るとそれも変化していることが分かります。
ワタミには5つのセグメントがあり、売上を支えるのは国内外食と宅食です。
この2つで全体の90%を占めています。
利益面で見ると、ダントツで宅食セグメントが稼いでいます。
逆に利益が全然出ていないのが「海外外食」セグメントとなっています。
ワタミがこれから注力するのは、宅食セグメントであることは間違いないでしょう。
そんな宅食事業で問題が起こっていたようです。
最後に従業員数です。
臨時従業員を合わせると、約9,000人となっています。
国内外食、宅食、海外外食に従事者が多いことが分かります。
まずは労働時間問題から振り返る
そんなワタミですが、外食産業ということもあり、ブラックな会社として有名でした。
残業時間が月140時間を超えるなど、はっきり言って異常です。
そんなワタミが2020年1月にホワイト企業大賞特別賞を受賞したことが話題となっていました。
しかしながら、このホワイト企業大賞は、受賞することがホワイト企業であることを証明しているわけではありません。
- 10万円の費用を会社側が払うことでエントリー
- ワタミが受賞したのではなく、グループ会社の三代目鳥メロが受賞
- 30数団体がエントリーし、31団体が何らかの賞
- 明確な選考基準はなし
このような背景もあり、ワタミがこれだけでホワイト化したと考える人の方が少なかった可能性があります。
そして今回の労働時間問題です。
2020年9月15日付けで、高崎労働基準監督署から残業代未払いに関する是正勧告がワタミに出されたというものです。
実態としては、Aさんは「ワタミの宅食」で正社員として勤務していたが、長時間労働による精神疾患のため現在休職中。
また長時間残業が常態化しており、6~7月には過労死ラインの2倍となる月175時間の残業があったとしています。
この報道を受け、ワタミは謝罪のリリースを出します。
当社では、当該社員の主張を真摯に受け止めて、当該社員に深く謝罪する。
全面的に当該社員の主張を受け入れると表明。
労基署の指示に基づき、時間外労働、深夜労働、休日労働の割増賃金不足分を過去にさかのぼって再計算して支払うとしました。
さらに、役員報酬の減額も発表していました。
- 代表取締役会長兼グループCEO渡邉氏:月額報酬50%の減俸6ヵ月
- 代表取締役社長兼COO清水氏:月額報酬30%の減俸6ヵ月
今回の真相とは?
さて、今回の真相を報じたとされる記事を読んでみましょう。
全10ページと長編に渡るので、かいつまんで紹介します。
- この記事は新田龍氏によって書かれ、新田氏はワタミがホワイト化したという記事を書いてきた人物
- 2014年からホワイト化を進めたワタミ
- 被害者であるAさんだけの言い分を見ると、ワタミが完全に悪い
- もちろん、ワタミがパワハラなどの防止が出来なかったのも事実
- Aさんはワタミの自社組合ではなく、外部の総合サポートユニオンに相談
- Aさんは営業所長として勤務していたが、部下などからパワハラについて訴えを起こされている
- Aさんの勤務実態は訴えとは異なり、それほど過酷ではない
- 勤怠記録も改ざんではなく、本人同意済みの修正
- Aさんの主張を鵜呑みにして組合が間違った主張をしている
要約すると、Aさんの主張はおかしいということでしょう。
ワタミはどう考えているか、リリースが出ているので、こちらも確認しましょう。
ワタミサイドの見解も11月2日に出ています。
営業所長が業務委託スタッフ11名から訴訟を提起されているのは事実。
営業所長の基で、24名が退職し、営業所長交代により複数名が復職している。
元営業所長は残業代未払いの申し立てを高崎労働基準監督署におこしている。
一方でパワハラを受けたスタッフは、その元営業所長の主張や業務、管理責任が不十分だと主張している。
しかし、元営業所長からは、ワタミの特別調査委員会の調査に対し回答がなく、解決には至っていない。
ということで、A氏の主張がどうだったかは不明ですが、少なくとも部下などから訴訟を起こされていること、A氏が営業所長になり、多くのスタッフが辞めたのは事実のようです。
会社発表には一定の信頼性があることから、A氏の行き過ぎた振る舞いがスタッフの辞職につながり、そこから自身が営業所長を交代させられようとして、結果A氏は会社が悪いという主張になったと考えます。
何度も言いますが、ワタミにそのパワハラを止める組織体制がなかったのは事実であり、その点は改善すべきでしょう。
営業所長が独断で何でも決定出来てしまう組織というのは、権力の集中とも言え、間違っています。
これだけでワタミがブラックかホワイトかは判断が出来ません。
労働基準監督署から是正勧告を受け取ったのも事実で、それがきっかけで役員報酬も大幅にカットしています。
ワタミの主張だけを信じるなら、上記の対応はかなり大事と捉え過ぎているようですし、A氏の主張だけ信じてもあまりしっくりは来ません。
今のところは、私はワタミの主張寄りですが、これから別のネガティブニュースが出る可能性もあるのかなと言う印象です。
もちろん、パワハラは社会からなくなるべきです。
まとめ
本日は、ワタミが再びブラックに戻ったわけではないという記事を解説しました。
まとめると、
- ワタミは近年業績が落ち込み、今期も調子が悪い
- ワタミは外食よりも宅食で利益を稼いでいる
- その宅食である問題が起きた
- 長時間残業で高崎労働基準監督署から是正勧告がワタミに出ていた
- それを受け、ワタミは役員報酬の減額も発表
- 一方で、被害者の主張だけを信じるのは危険
- ワタミ側にも責任があったのは事実
- 被害者は元部下などからパワハラ訴訟を起こされていた
- ワタミの反応だけ見ると、A氏の主張に対して過剰のようにも思える
- 今後に注目
ワタミのIRページは過去のニュースが見れないようになっており、あまり親切とは言えないなと感じました。(決算短信は見れるが、IRニュースは3つまでしか遡れない)
IRの姿勢がよろしくない会社は事実を隠したいと思われても仕方がなく、それでこれからさらなる悪材料が出るのではと思いました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。