東洋インキのリリースを見て感じたことなどを書きます。
適時開示情報閲覧サービスを見ていると、東洋インキSCホールディングスから興味深いリリースが出ていました。
そのリリースとはフィリピンにある海外子会社において、簿外の借入金があることが判明し、調査報告書が完成したというものでした。
今回は、このリリースについての感想と、海外子会社の監査の難しさについて書いてみます。
結論:海外だからこそ起こってしまうが、このリスクに対応するのがこれからの時代
不適切な会計処理
東洋インキのリリースはこちら。
以下、かなりざっくりの要約
- 不正を起こしたのは現地(フィリピン人)の経理部シニアマネージャー
- 簿外の借入金や在庫・買掛金の残高を用い、本来よりも利益が出たように調整
- 不正の動機ははっきりしないが、会社のお金を使い込んだわけではない
- 利益を出さないとという意識から行ったが、会社としては過度なプレッシャーはなかったと主張
- 本社から派遣された日本人社長は気づかなかった
- 内部監査も行っていたが発見には至らず
- 連結チームも残高がおかしいと指摘したが、その時は偽造の残高証明書でごまかされた
- 影響額は約26億
- 問題の社員は懲戒解雇も、法的処置については記載なし
- 現地の会計監査では不正は発覚しなかった
ということで、現地人による不正でした。
こういうケースって大抵は、不正に得たお金をギャンブルやFX、交際費などに使用するイメージですが、この件は本当に利益を調整しただけのようです。
原因として下記が挙げられています。
- 社長は経理業務に精通していなかった
- 問題の社員が15年以上も財務・経理の責任者だった
- エクセルファイルでの作業があり、変更・修正が容易だった
- 内部監査体制が不十分だった
- リスク情報を上に上げる体制も不十分だった
感想と内部監査
ここからは感想と内部監査について考えます。
この例は、海外子会社あるあるという感じだなぁ~と思いました。
社長は日本人だけど、営業出身なので、経理は現地の人に頼りっきり。
そして管理部門だから、異動もなく、ずっと同じ人が責任者を続ける。
内部監査に行っていたが、抜き打ちでもないので、事前準備が可能でいくらでもカバーできる。
この改善は中々難しいように思えます。
日本人の経理スタッフを現地に出向させて、何年か毎に交代させるのが、ベストなんでしょうが、規模が小さい会社ならそのコストが負担となってしまいます。
内部監査チームの監査のレベルも、そこまで高くないことが多いでしょうし、海外での監査となるとさらにハードルも上がります。
最後のリスク情報が上層部に上がってこなかったというのは、改善が必要な部分かなと感じました。
内部通報制度だけあって、活用されないということはあり得ますが、制度だけにならないようにしたいです。
グローバル化ということで、メーカーが人件費の安い海外子会社で生産をするという流れは以前からあるわけですが、海外展開でのリスクも同時にあります。
そういったリスクに対する仕組み作りというところが、これから先ますます需要があるのかもと思います。
そうなるとコンサルに頼るという方法もありそうですが、コンサル業に求めるのはやはりその積み上げてきた経験なのではと考えます。
内部監査だけで解決出来る問題ではないですし、やはり様々な関係者の協力なくしては、不正を防げないのかなと感じました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。