債務超過って聞くと、なんか怖いけど、中身を知っておくと無駄に怖がる必要はないと気づけるはずです。
週末、日経のニュースでレオパレスが100億超の債務超過の見込みということを知りました。
以前も、レオパレスの決算延期は経理辞めすぎ?という記事を作成しました。
www.finance-accounting-value.com
今回はレオパレスを例に債務超過とはについて、経理マンの視点で解説します。
経理になるまで、債務超過の意味なんて理解していませんでした。
この記事で債務超過とレオパレスの状況をバッチリ理解しましょう。
結論:もちろんヤバいが、まだこれからの可能性
日経の債務超過のニュース
まずは日経のニュースからおさらい(有料記事なので、毎日新聞などの情報から補完)
レオパレスが9月30日発表予定の第1Qの決算(2020年4月~6月)で120億超の赤字となり、100億以上の債務超過に陥る見込み。
アパートの施工不良問題やコロナによる影響で転勤者の減が、減収の要因となった。
レオパレスは資本増強のため、外資ファンドと増資交渉する予定。
増資がまとまらなければ、経営破綻の可能性が高まる。
債務超過になると、信用力の低下が一番の懸念事項。
ざっくりとまとめると、元々、前期の赤字で純資産が大幅に減少しており、今回の赤字で債務超過になったということです。
皆さんこのニュースを見て、何か疑問に思いませんでしたか?
それは日経が「120億」という具体的な赤字の金額を予想していることです。
前期は800億円の赤字だったので、赤字であることを予想することは簡単で、私でも出来ます。
しかしそれが、50億でも200億でもなく、120億という数字なのです。
当然、決算の発表日は9月30日で、レオパレスによって公表された情報ではありません。
これを書いているのは9月27日ですが、恐らくこの数字に近い数字が発表されます。
また今度日経の謎について書きます。
債務超過とは?
本題に戻り、債務超過について説明していきます。
債務超過とはBS(貸借対照表)の話です。
つまりある地点の数字ということです。
貯金に例えるなら、3月末なら100万円、6月末なら120万円というように、波があるのがBSということです。
PLは売上と利益なので、大きくければ大きいほどいいだけですが、BSには分かりやすい正解がありません。
そのBSというのは、資産と負債と純資産という3つのセクションがあります。
資産=負債+純資産という式が常に成り立ちます。
債務超過とは負債が資産を上回るということです。
普通なら、資産は負債と純資産を足しているので、負債が資産を上回ることがほぼありません。
普通の会社(普通ではない)のトヨタ自動車で言えば、下記になっています。
資産:56兆円
負債:34兆円
純資産:22兆円
レオパレスの20年3月末のBSは、下記です。
資産:1,970億円
負債:1,954億円
純資産:16億円
これが資産超過になるので、例えばこんな感じです。
資産:2,000億円
負債:2,100億円
純資産:△100億円
このように資産よりも負債が多くなる状態です。
言い換えるなら、債務超過とは純資産がマイナスになっているということです。
そして1円でも純資産がマイナスなら債務超過と呼ばれます。
なぜ純資産がマイナスになる?
負債が増える仕組みは理解しやすいです。
例えば、負債の代表例として借入金があります。
銀行からお金を借りれば、借入金が増えて、資産の預金も増えます。
このように資産と負債がセットで増えるパターンは多いです。
純資産の代表格、つまり大きな要素として資本金と利益剰余金があります。
資本金とは会社を作るための出資金と考えましょう。
利益剰余金とは、今までの利益の積み重ねです。
黒字を続けている企業は、この利益剰余金が大きくなっていきます。
そして利益剰余金は、配当をすれば減少します。(配当をしないことを選択すれば、減らない)
資本金は増資や減資によって増減しますが、毎年動くものではありません。
一方利益剰余金は、利益がトントン(利益ゼロ)でなければ毎年増えたり減ったりします。
まとめると、純資産がマイナスになる一番の要因は、利益剰余金のマイナスで、これは大幅な赤字によって引き起こされます。
レオパレスのBSを見てみましょう。
2019年3月末の数値は下記です。
資産:2,920億円
負債:2,100億円
純資産:820億円
これがこのように変化しました。
レオパレスの20年3月末のBSは、下記でした。
資産:1,970億円(△950億)
負債:1,954億円(△146億)
純資産:16億円(△804億)
ここがポイントです。
債務超過と聞くと、負債が増えたように聞こえるかもしれませんが、純資産の方が大きく減少しているのです。
そしてこの純資産の減少は、利益が大幅な赤字だからです。
レオパレスの2020年3月期のPL(2019年4月~2020年3月の1年間)は802億円の赤字でした。
つまり純資産のマイナスの804億というのは、赤字の影響がほぼ全てということです。
債務超過になるのは見えていた
直近の決算での純資産は16億円しかありませんでした。(2020年3月末)
これは資本金に増減なければ、16億円以上赤字になれば債務超過になることを示しています。
レオパレスは当期(2020年4月からの1年間)の業績予想を出しています。
半年で150億円の赤字、通期なら80億円の赤字と予想していました。
第1Qの3ヶ月でも赤字なのはほぼ分かっており、恐らく債務超過になることは当期が始まった時点で濃厚だったかと思います。
じゃあどうするの?
ここからレオパレスはどうなるのかという話をします。
債務超過を解決するには、とにかく利益を出すというのが第一と言えますが、通期でも赤字予想であり、これには期待出来ません。
そこでニュースにもあったのが、増資です。
これは資本金の額を増やすということで、それを外資ファンドに依頼しようということです。
外資ファンドとしては、本当にレオパレスがここから復活出来るのかを見極めるということになります。
債務超過になっている会社として、いきなりステーキなどを展開するペッパーフードサービスなどもあります。
また過去には、東芝やシャープなどの大企業も債務超過になったことがあります。(現在は解消済み)
つまり債務超過だから即ヤバいかというと、そうではないということです。
もちろん、ヤバい状態ではあるのは事実です。
債務超過が続くと、上場廃止にもなってしまう可能性があります。
ただし、今すぐにというわけではありません。(最短なら2年間)
上場廃止になれば、信用力がさらに落ちてしまい、逆転がより難しくなるということです。
だからニュースでも外資ファンドとの交渉が決裂すると、危険であるとしているのです。
当面の営業活動については現預金があれば、動かしていくことが可能です。
しかし、債務超過であれば、銀行側としても借入をこれ以上増やすことが難しくなってしまいます。(現状180億円の借入金がある)
レオパレスは引き続き綱渡りが続くわけですが、今すぐにという状況ではないと言えます。
後付は簡単
ここまでで債務超過とは何か、なぜ発生するのか、レオパレスはヤバいのかという話をしてきました。
最後に、後付は簡単なので注意しようという話をします。
2015年の東芝の不正会計が発覚した時、 後からPLやBSを見てみると不正の兆候があったということがあります。
もちろん、不正をしているので、どこかに歪みがあったというのは事実でしょう。
しかし、この場合は先に不正という結果ありきで、そこからどこかおかしいと思って見るからそれが見つかるということです。
レオパレスでも同様で、倒産になれば、そこがスタートになって粗探しが始まるでしょう。
もちろん、今の段階でも危険な状態なので、現に色々と批判されています。
真っ当な批判ならいいのですが、ただ単に「レオパレスはなんかヤバい」という感覚的なものがあります。
これそのものは仕方がありませんが、それ(他人の考え)に対して何も考えずに同意して乗っかってしまうことが危険だと思います。
まずは感覚からスタートすることは悪くありません。
そこから自分で数値などを調べてから、自分なりの仮説結論を展開するべきだと自戒も込めて考えます。
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