今更訊けない時価総額とは何かと、もう一つの概念を紹介します。
時価総額という言葉はニュースでよく出てきます。
例えば、IFRSを適用する会社は会社数ベースなら6%の234社だが、時価総額ベースなら40%であるというようにです。
ここで時価総額という言葉を知らなければ、ニュースの意味を理解できません。
私も大学生時代から新聞などでそういった表現は見ていたはずですが、理解したのは会社に入って半年後とかでした。
この記事を読んで、しっかりと時価総額について理解しましょう。
結論:時価総額とはドラフト会議に過ぎない
時価総額を知らなかった経理マン
私は時価総額の意味を知ったのは、株式投資をしようと思ったからでした。
経理の中でも、ウチの時価総額は~という声も聞こえていましたが、それでも意味を知ろうとしないダメな人間でした。
経理の実務でも知らなくても、仕事は出来ました。(組織にとって良い仕事だったかはさておき)
株式投資をしていく中で、ようやく意味を理解したのです。
きっと今からでも、何も遅くはありません。
今なら、知らないのは恥ずかしいとさえ思います。
時価総額はシンプル
時価総額の算出方法はシンプルです。
株価×発行済株式数=時価総額です。
時価総額は企業間で比較する場合にも使用し、とにかくデカければいいというものです。
しかも会社にとって株価も、高ければ高いほどいいものです。
発行済株式数とは株式を発行した数を指し、これは多ければ多いほどいいわけではありません。
つまり会社は株価を高くすれば、時価総額が大きくなり嬉しいということです。
発行済株式数について補足です。
株式投資を始める際に、私には一つの疑問がありました。
それは会社によって株価があまりにも違うということです。
例えば、みずほフィナンシャルグループは一株140円で、トヨタ自動車は一株7,000円です。
キーエンスに至っては、一株46,580円です。
これだけ差があると100株買おうと思えば、みずほなら1万4千円でOKで、トヨタなら70万円も必要、キーエンスなら460万もかかるのです。
これは業種が違うから、差があるわけではありません。
例えばメガバンクの3行を比較しましょう。
- 三菱UFJ:440円
- 三井住友:3,100円
- みずほ:140円
以上のように、三井住友銀行だけが高いという構造になっています。
株価だけの比較なら、みずほの22倍は三井住友フィナンシャルグループとなります。
しかし、会社として一番大きいのは三菱UFJフィナンシャル・グループのはずです。
ここで、時価総額で考えればこの不協和が解決します。
時価総額は下記となります。
- 三菱UFJ:6超円
- 三井住友:4.2超円
- みずほ:3.5超円
こう書けば分かるかもしれません。
発行済株式数が違うのです。
先程、発行済株式数は多いことがいいわけではないと書きました。
つまり、発行済株式数が少なくて株価が高い=発行済株式数が多くて株価が低い、となることがあるのです。
ということは、株価は会社によってバラバラだけど、時価総額で見れば企業間で比較出来るとも言えます。
時価総額はこのように計算結果が表示されています。(日毎に変化する)
時価総額が最強なのか?
これで時価総額については理解できたはずです。
大きければ大きいほど、素晴らしいという時価総額です。
そして大きくするには、株価を上げるということでした。
株価によって増減するのが、時価総額なので、時価総額は毎日変化します。
よくGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の時価総額が日本の上場会社合計の何割だというニュースも見かけます。
これはGAFAの株価がどんどん上がるスピードと、日本の上場会社合計の成長を比べているということです。(GAFAが異常なほどすごいのか、日本の成長率が低いのか、どちらもあるでしょう)
ここで重要なのが、株価とは期待を含んでいるということです。
実際に決算が好調だから、株価が高くなるパターンもあります。
しかし、赤字が続いているのに、株価がどんどん高くなることもあります。
この場合は、これから化けるという期待があるから株価が上がっていると言えます。(買いたいという需要が強く、売りたいという供給が弱い)
つまり株価とは投資家の期待が入って、変化する性質であるとなります。
だから、時価総額にも期待が含まれているのです。
これを例えるなら、プロ野球のドラフト会議です。
ドラフトで1位指名された選手が、期待された会社です。
その会社の実績や将来性を基に、将来すごい会社(選手)になる(もしくは既に完成されている)ということで選ばれるのです。
当然ながら、ドラフト1位だとしても、成功が約束されているわけではありません。
期待通りの結果を残せる場合と、期待外れになってしまう場合どちらもあり得るのです。
さらに株の場合なら、個別の反応ではなく、市場の全体的な反応というものもあります。
〇〇ショックのようなことになれば、市場全体の会社の株価が下がってしまいます。
そうなれば、時価総額も下がります。
しかし、それは現実と整合しているのかというと微妙ではないでしょうか。
また為替などによっても変動します。
自動車産業などは円高に進むと、業績が悪化するので、為替の変化によって時価総額が下がることがあるということです。
為替は企業の努力ではどうすることも出来ません。
それでも期待値は勝手に上がったり、下がったりするのです。
じゃあ何がいいんですか?
時価総額を知った人に、ここでもう一つ知って欲しいのが総資産です。
総資産とは、企業の現在のマックスの体力みたいなものです。
BS(貸借対照表)は、資産の合計と負債と純資産の合計が一致します。(この説明は分からなくてもOKです)
資産なので、現預金や売掛金、在庫、固定資産などなどの合計が総資産です。
これは決算毎にしか分からないので、4半期(3ヶ月)に一度しか変化しません。
毎日、一喜一憂することがなく、期待によって変動することがありません。
しかし総資産も万能ではありません。
まず、日本の売上の1位と言えば、トヨタ自動車で売上は29超円です。
しかも同じく時価総額の1位で約23超円です。
しかし、総資産の1位は総資産53超円のトヨタ自動車ではなく、三菱UFJフィナンシャル・グループの336超円です。
これは金融という業種なので、預金等が多くなり、総資産の額が大きくなるという特徴があるからです。
業種が固定資産が多い会社ほど、総資産も大きくなります。
インターネットを利用した事業をしているなら、固定資産が少なく総資産も少ない傾向があります。
逆にトヨタ自動車のようなメーカーであれば、工場などの固定資産の額が大きくなります。
つまり、業種が違えば比較がしにくいということです。
しかし、余計な期待は含まれていないので、業種が同じであれば比較に意味があるということでもあります。
他社との比較ではなく、自社の過去との比較も有効です。
企業の活動の目的とは売上を上げて、利益を増やすということです。
利益が増えると、BSが大きくなるということなので、少し大げさに言えば企業の活動とは総資産を大きくすることと同義です。
つまり総資産が過去と比較してどうかというのも、重要と言えるでしょう。
しかもその総資産には投資家の期待が含まれていない、純粋な実力とも言えます。
もちろん、BSはPLとは違いその時々の数値なので、タイミングによって変動が大きい数字ではあります。
まとめ
まとめると、時価総額だけを見ても勘違いをすることがある。(なぜなら時価総額は、投資家の期待が含まれているから)
とは言え、総資産が完璧な指標ではない。(ただし期待は含まれていない)
どんな分析にも言えることですが、何にでも使える完璧な指標はありません。
その分析の目的に合った、手法を選択することが大事という話です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。