論理的思考の習得には、3ヶ月で300時間を目安に勉強せよという本を紹介します。
ロジカルシンキングは永遠のテーマではないでしょうか。
私は経理マンで、ロジカルシンキングを強制されることはなかったので、この本を読んだだけでは完全には身についていません。
ただ、これからはしっかり以下の内容を理解して、批判的思考を続けると決意しました。
Amazonの購入履歴は、2019年9月となっていました。
読んだのは結構前で、記事にするまで1年もかかりました。
非常に読み応えがあって、いい本だと思います。
記事の最後に3分で解説した動画があります。
結論:まずは3ヶ月で300時間ロジカルシンキング
論理的思考のコアスキル(波頭亮著)
ちくま新書から2019年4月に発売された本となります。
以下、本の独自要約です。
まえがき
論理的思考力を実際に身につけるための本
具体的な練習メニューや実践的な勘所も紹介
1章:論理的思考とは
思考とは何か
→「(何かを分かろうとして)情報と知識を加工すること」
ものを分かる手段として下記の2つ
思考:知識と情報加工力で構成
情報収集:情報収集力で構成
情報加工のミクロのプロセス
- 要素に分ける
- 対応する知識要素と比べる
- 同じと違うを整理し、くくる
思考成果は2つのタイプ
①事象の識別
②事象間の関係性の把握
①事象の識別を積み上げて「体系化」と「次元の拡大」が得られる
分類・体系化によって具体と抽象が分かる
②事象間の関係性の把握によって3つの関係性が分かる
- 独立
- 相関
- 因果(原因が先に起きてその後結果となる、原因事象に結果の意味的連動性がある)
構造化とは
事象の構成要素と、それら構成要素間の位相/関係性を明らかにすること
論理とは何か
「既呈命題」+「推論」+「次段階の命題」
したがってとなぜならば
論理的であるために、その論理展開が客観的妥当性を有している必要がある
さらに、論理展開の文脈が受け手に理解され、納得されること
論理的思考は自身の頭の中で、客観的妥当性を意識することであると同時に、受け手の理解力といった主観性のファクターを考慮する必要がある
演繹法と帰納法
A=B(既呈命題)、B=C(前提)→A=C(結論)
演繹法は適切な前提の設定が必要
前提が適切であるために、以下の2つが必要
- 意味内容的に既定命題を包含していること
- 意味内容が普遍的妥当性を有していること
演繹法における普遍的妥当性の度合い(高い順)
- 数学的/論理学的公理(例:三角形の内角の和)
- 自然科学的法則(例:力学の公式)
- 法律・制度(例:窃盗が犯罪)
- 社会科学的法則(例:政策金利の引き上げが物価上昇を抑制)
- 道徳律・生活規範(例:嘘をつくことは悪いこと)
- 個人的経験・意見(例:猫好きはいい人)
帰納法とは、複数の観察事象から共通事項を抽出し、その共通事項を一般命題化として結論とする論理展開である
演繹法は純粋論理的(結論が真か偽)、帰納法は実証科学的(正しさが強いか弱い)
帰納法は、観察事象の適切なサンプリングが必須
そのために①何らかの共通事項が成立するような観察事項を揃える
②対象群全体を代表するのに妥当な事象を集める
演繹法と帰納法は、論理展開としては全くの別
しかし、演繹法における結論の担保している前提は帰納法によって生み出されるので、両者は密接に結びついている
客観的正しさと論理的な正しさ
客観的正しさにはロジックとファクト(事実)が必要
2章:論理的思考のコアスキル
3つのコアスキル
- 適切な言語化
- 分けると繋げる
- 定量的な判断
適切な言語化は3つの段階
①言葉の選択(過不足なく言い表す言葉を探す)
②十全な文(文法)
③文章・文脈
①の補足:シニフィアン(表記)とシニフィエ(意味内容)を理解する
②の補足:正確に表現するために、
定性的で曖昧な表現を避け、定量的な表現や相対化した表現を心がける
二義的な意味の発生する言葉や文を避け、一義に意味内容が決まる表現をする
③の補足:ピラミッドストラクチャーによって構造化する
分けるスキル・繋げるスキル
分け方の3つの要件
- ディメンジョンの統一(これが出来なければ、論理的に分けること、比べること、くくることもできない)
- 適切なクライテリアの設定(多様なクライテリアを想起できるか)
- MECEな分け方
繋げるスキルはコロケーション(意味の共通項)とアナロジー(構造の類似性)が重要
定量的な判断は、論理の蓋然性(正しさの度合い)の把握のために必要
①確率で判断
②統計的に判断
必ずしも確率や統計データが必要というわけではない(事象の蓋然性に注意を払う)
3つのコアスキルに加え、「知識と経験」がガソリン
3章:コアスキル習得の具体的方法
何を練習するのか
- タテの因果・ヨコの因果(対象の因果関係を構造的に把握)
- ベン図(事象などを集合関係で捕捉し、整理する)
- ピラミッドストラクチャー(論理構造を明らかにする)
- フェルミ推定(限られたデータから、定量的な判断を行う)
- 正反の立論
1.の捕捉:なぜなぜを繰り返すとタテの因果が分かる(理由の深堀り)
しかし、それだけでは不十分で、ヨコの因果も意識(並列の理由)
4の捕捉:キーデータの例
- 日本の人口:1.3億人
- 世界の人口:75億人
- アメリカの人口:3.3億人
- EUの人口:5.1億人
- 中国の人口:14億人
- 日本のGDP:550兆円
- アメリカのGDP:2,200兆円
- EUのGDP:2,000兆円
- 日本の一人当たりGDP:3.8万米ドル
- 東京都一人当たりGDP:538万円
- 沖縄県一人当たりGDP:217万円
- 平均年収:420万円
- 全世帯数:5,800万世帯
- 単身世帯数:1,800万世帯
- 労働者数:5,800万人
- 正規労働者割合:63%
- 外食市場規模:18兆円
- 全国の食品スーパーの数:1.5万店(コンビニ5.5万店)
- 全国の食品スーパーの年間売上高:15兆円(コンビニ11兆円)
どう練習するか
- 手を使って考える(紙に書き出すことで思考を助ける)
- 経験と紐付けて考える(抽象だけでは腹落ちして納得しない)
- 集中して考える
どれくらいやるか
ビジネスパーソンの1つのスキルなら、1,000時間
まずは300時間を目安にすべし
1日3時間を90日続けるイメージ
100時間毎にクリティカル・シンキングテストや大学院の共通試験で、成長度を確認
4章:クリティカル・シンキング
ネイチャーとして間違える脳(間違えようとして間違えるのではなく、本能として動いた結果間違えてしまう)
認知バイアスと後づけの論理
認知バイアスは3種類
- 確証バイアス(自分の信念に固執)
- 感情ヒューリスティック(自分の感情・好悪に影響され客観性を失う)
- ステレオタイプ(社会通念や、自分の経験則に基づく先入観)
1.の補足:バランスを取ることへの意識(そのファクトが偏っていないか)
2.の補足:意識的に属人性を排除して考えてみる、落ち着いて冷静に対峙
3.の補足:先入観のみで判断していないかを自省
クリティカル・シンキング:それは本当に正しいのか
論理チェック
根拠が妥当か(情報に誤りがないか、偏りがないか)
論理が妥当か(単純相関を因果関係と間違えて判断していないか)
クリティカルなスタンス
- 安易に結論に飛びつかずに熟考する
- 一度出した結論を柔軟にアップデートする
クリティカル・シンキングは、自分自身の認知と思考に対する批判的検証である
感想
非常に読み応えのある本でした。
基礎的な部分から細かく記載してあるので、着実に理解することが出来ます。
ロジカルな文章なので、読んでいて理解する下地の負担が少ないとも言えます。
一言だけ足りないなと感じたのは、具体的なトレーニング方法かなぁと思いました。
ただ、この本に書いてあることを常に意識すれば、かなりロジカルシンキングが身につくだろうと感じる本なのは間違いないです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。